過去の成功にこだわり、新しいやり方を受け入れようとしない年上部下。ちょっと厳しいことを言ったら、翌日から会社に来なくなる打たれ弱い若手……。人が勝手に育つ環境が崩壊し、日本企業における部下の指導・育成は難しさを増している。そんな中注目を集めるのが、「フィードバック」という部下の指導・育成手法だ。「耳の痛いことも部下に伝え、彼らの成長を立て直す」というフィードバックは、説教やダメだし、コーチングとは何が違うのだろうか。
上司の頭を悩ます、困った年上部下や若手。例えばあるIT系企業には、こんな年上部下がいる。かつて花形だったあるコンピューター言語に精通する部下。だが世間の主流はPCからスマホに移り、新しい言語が流行るようになった。それなのにスマホシフトに必要な会社の方針に従わず、新しい言語を学ぼうともしない。何度も話し合いをしたが態度は変わらない。このままでは給料を下げざるを得ないのだが……。営業部門にも過去の成功にしがみついてやり方を変えようとしない、この手の部下はいるのではないだろうか。若手部下のいるマネジャーからは、次のような声が寄せられる。「普通にアドバイスしただけなのに、しばらく姿が見えないと思ったらトイレで泣いていた」「少し時間にルーズなところがあり、意識するよう注意したら、仕事に手が付かず上の空な感じになってしまった」。あなたの身の回りには、こんな困った部下はいないだろうか。
こうした年上部下や今どきの若手に、旧来型の説教やダメだしで対応することは何が問題なのだろうか。一方的にこちらの見方、考え方を伝える説教やダメだしは、どうしても感情的になりやすい。著書『実践!フィードバック』でフィードバックの手法を5つのステップにして示し、職場で活用しやすいように解説している東京大学准教授の中原淳氏は、「マネジャーが感情的になって失うものは多いが、得るものはほとんどない」と話す。