タモリ (c)朝日新聞社
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ビートたけし (c)朝日新聞社
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 4年ほど前に明石家さんまの「60歳引退説」が話題になったことがあった。さんま本人がいくつかの番組で「60歳になったら引退する」ということをほのめかす発言をしていたのだ。

【写真】この大御所芸人の10年後は…

 ところが、それから4年が経って62歳になった現在でも、さんまはお笑い界のトップランナーとしての地位を保っていて、衰えはほとんど感じられない。それどころか、11月26日放送の『誰も知らない明石家さんまNGなしロングインタビューで解禁&さんま青春時代ドラマ』(日本テレビ系)では、「10年後のお笑い界のトップは?」という質問に対して、こう答えていた。

「今、俺がお笑い界のトップとしたらやで、10年後も俺。72歳ならいけると思う」

 10年後まで頂点に立ち続けることを高らかに宣言してみせたのだ。実のところ、お笑い界の頂点で意欲的に活動を続けているのはさんまだけではない。今年、70歳を迎えたビートたけしも、バラエティ番組で活躍するかたわら、映画『アウトレイジ最終章』で監督を務め、芥川賞を目指して『アナログ』という純愛小説を出版した。また、10月に放送された5日連続の生放送特番『おはよう、たけしですみません。』では、放送コードに縛られない毒舌トークで世間を騒がせた。

 さんま、たけしと並んで「お笑いBIG3」と呼ばれるタモリは現在72歳。『ブラタモリ』『タモリ倶楽部』『ミュージックステーション』などのレギュラー番組を淡々と続けている。『ミュージックステーション』の長時間生特番では「収録が長すぎて体力が持たない」と笑いながら不満を漏らす場面もあるが、飄々としたたたずまいは相変わらずだ。

 たけし、タモリが70代でこれだけ密度の濃い活動を続けていることから考えると、10年後に72歳のさんまがトップを走っているというのもあり得ない話ではない。「お笑いBIG3」の天下はなぜこれほど長く続いているのだろうか。

 理由は大きく分けて3つある。1つは、彼らが世に出たタイミングが良かった、ということだ。1980年に漫才ブームが起こり、若い漫才師たちがそれまでにない日常的な感覚を取り入れた漫才を披露した。たけしもそこから世に出た1人だ。そこから世の中の笑いの感覚が変わり、バラエティ番組の作り方にも変化が起こった。この前後の時期に世に出たさんま、たけし、タモリは、この変化にいち早く対応して、圧倒的な支持を獲得した。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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