世田谷一家殺害事件の被害者遺族・宮澤良行さんが9月6日、さいたま市内の病院で肺炎のため亡くなった。84歳だった。
2000年の暮れに、東京都世田谷区上祖師谷で宮澤みきおさん(当時44)一家4人が殺害された事件発生から12年目の無念の死だった。みきおさんの父親である良行さんは生前、こう訴え続けた。
「私が生きているうちに犯人が逮捕されることはないかもしれない。だが、どうして4人が殺されなければならなかったのか。本当の理由を、真実を、どうしても犯人に聞きたい」
殺人事件などの公訴時効撤廃・停止を求めるため、09年2月に未解決事件の被害者遺族らが結成した「宙(そら)の会」の会長を務め、全国で署名活動、講演などを続けた。その努力が実り、翌年4月には国会で改正刑事訴訟法が成立。すべての殺人事件の公訴時効は廃止された。
だが、長年の無理がたたったのか、その後は体調を崩しがちになった。
自宅にあるみきおさん一家の1千枚以上のスナップ写真をいとおしむように眺めながら、ポツリとこう呟くこともあった。「最近は、思い出にすがらないと生きていられないようになりました」。
今夏には肺炎を発症。意識がなくなり、そのまま快復することなく、帰らぬ人となった。
元警視庁成城署長で一緒に「宙の会」を立ち上げた土田猛さんはこう語った。「事件が未解決のまま亡くなられ、さぞや無念だったでしょう。捜査員の奮起で事件の進展を願いたい」。
※週刊朝日 2012年9月21日号