そして、同じくブラジル戦で出番のなかった倉田は持ち前の運動量とパスセンスに加え、10月のニュージーランド戦、ハイチ戦で連続得点したようなに鋭い飛び出しからフィニッシュに直結するプレーが期待できる。攻撃的な中盤の役割をどこでもそつなくこなせる器用さも魅力だ。
「(井手口)陽介が相当、守備で広い範囲を埋めていたので、特に前半などは前にうまいこと運ぶことができなかった。ただ、そういうのは自分の特徴なので、それをやるイメージを持ちながらずっとアップしていました」
そう語る倉田は相手が強豪でもひるむことなくチャレンジできることも自らの特徴だと語っており、ベルギーを相手に存在感を発揮できれば大きなアピールになることは間違いない。
そして森岡だ。ブラジル戦は前半ですでに3点を取った相手がスローダウンしたことで、攻撃面でカウンターがはまりやすい状況になったとはいえ、森岡は効果的にボールを引き出しながら正確なパスでチャンスを作れていた。それまでの時間帯には見られなかった意図のある崩しが出てきたのは森岡のクリエイティビティによるところが大きい。
ワースランドベベレン(ベルギー)でのプレーを見ればわかるように、森岡は長澤や倉田よりさらにトップ下の色が強いキャラクターだ。これまで香川や清武が担ってきた役割をこなしながら、リーグ戦で7得点8アシストを挙げているように、決め手の部分でも力になれるポテンシャルを持つ。
3年前のブラジル戦で先発した時は相手のプレッシャーに気おされてほとんど何もできなかったというが、今回は「今日は感じなかったですし、外国人に慣れたのか、あのレベルの相手にも自分のプレーを出せる自信が前よりもついている」と胸を張る。現在、自身がプレーする国であるベルギーで存在価値を証明する準備は万端だろう。
今回の欧州遠征の位置付けを考えれば ハリルホジッチ監督がトップ下候補を新たに選んだこと自体、かなりのチャレンジである。彼らのベルギー戦での出来が、今回はメンバー外となった香川や、ケガで離脱していた柴崎、12月に国内組で臨む東アジアE‐1選手権(旧東アジア・カップ) で主力の一角を担うであろう清武などの処遇にも大きく影響するはずだ。
今回の欧州遠征とE-1でのテストで人選を見極め、来年3月に予定される2試合を経て、5月にワールドカップに挑む最終メンバーが発表される流れとなる。選手たちにとっては限られた代表合宿や試合でのアピールに加えて、クラブで継続して試合に出場し、結果を残していくことが求められる。特に攻撃的MFの3、4枚の枠を巡っては最後まで激しい競争になりそうだ。(文・河治良幸)