■AD克服へ 各社の挑戦は続く

 アリセプトを開発したエーザイは新たに、抗Aβ抗体の「BAN2401」とβセクレターゼ(BACE)阻害薬の「エレンベセスタット」を開発中だ。BACEはある種のたんぱく質からAβのモノマーを切り出す働きをする酵素。BACE阻害薬はいわばAβの源流を断つ戦略だ。後者は全世界で合計2660人の患者を集め、二つの臨床試験を実施している。

 各社とも互いを横目で眺めながら、まさにトライアル・アンド・エラーの連続で治療薬の開発を進めている。これらのうち最も早く患者に届くものは、うまくいけば20年前後に登場する見込みだ。

 ただ、現在開発中のAβターゲットの治療薬はADの進行を遅らせる薬で、完全に治せるものではない。しかし、これは必ずしも暗いニュースではない。そもそもADの発症は60~70代に多い。今後登場する複数の薬でこれを10~15年遅らせることができれば、天寿にほぼ近づき、事実上のAD克服といえるからだ。

(取材・文/村上和巳)

※週刊朝日MOOK「家族で読む予防と備え すべてがわかる認知症2017」