「液晶の雄」として優良企業だったシャープも今は昔。2011年度は過去最高の赤字に転落し、6月末現在の有利子負債は1兆円を超えた。一方現預金は2100億円で、自力での返済能力はない。
そのシャープが頼ったのは、電子機器の受託製造で世界トップの鴻海精密工業(台湾)だった。
今年3月、株式の約10%を取得してもらうことで合意。だがその後、株価が急落し、「合意した買い取り価格では損が出る」と、鴻海は買い取り価格の見直しを迫っている。
今すぐにでも資金繰り懸念を払拭(ふっしょく)したいシャープには時間がない。一方の鴻海は焦る必要はまるでない。
UBS証券出身で小樽商科大学大学院の保田隆明准教授は、こう話す。「鴻海はよりよい条件が出るのを待っているだけです」。
実は鴻海はすでにシャープへの"侵食"を着々と進めている。シャープ商品の最大製造拠点で、シャープの大口取引先である堺工場の運営会社の株式は、すでに約半分が鴻海の所有なのだ。
「鴻海は工場はほしいが、儲からない事業分野は興味がない。シャープは堺工場なしで経営が成り立たない。シャープが有利な条件を出すまで、鴻海は出資しない。会見のドタキャンなどの振る舞いを見ると、そういう魂胆でしょう」(国内運用会社幹部)
※週刊朝日 2012年9月14日号