いよいよ今週末に投開票が行われる衆院選。『知性の顛覆』著者である作家・橋本治氏による、状況と知性についての短期集中連載の第2回では、衆院選での自民・希望・民進『三方一両損』の構図を橋本氏が分析する。
――突然降って沸いたような今回の「総選挙」もいよいよ終盤戦。目まぐるしく動く政局に振り回されて、「何をどう考えていいのか分からない」という有権者も多い中、10月22日の投票日を迎えそうです……。
橋本:今回の選挙って、落ち着いて考えると結局、誰も得をしないという、落語や講談に出てくる「三方一両損」なんですよ。安倍は北朝鮮問題やら民進党のスキャンダルやらで、一時は落ち込んでた支持率が、ここにきてちょっと上がったから「今だ」と思って解散総選挙に踏み切ったんだろうけど。選挙戦じゃ希望の党や民進党の悪口ばっかり言っていて、そういうコトしていると自分が嫌われるというのが、相変わらず分かってないでしょ。
一方、希望の党の小池百合子は民進党を乗っ取って、一気に主役になろうと考えたんだろうけど、その過程で「私にとって都合の悪い人は排除します」なんて言うもんだから、結局はタカ派だってのがあっさりバレて嫌われた(笑)。で、前原がその小池に手玉に取られて、分裂崩壊しちゃった民進党は「ああ、あの人たちってやっぱりバカだったのね……」とみんなに納得されちゃった。
その希望の党を排除された面々は、急遽団結して立憲民主党を作った。ほとんど忠臣蔵だよね。代表のせいでお家断絶となった民進党の浪士が、仇討ちを決意して結集したという……。日本人の同情はこういうところに集まるから、元の城をなくしてもここはそれなりに勝てる。そういうもんです。
――お家断絶というか、前原新代表を選んだばかりの民進党の「自爆」には、驚いた……というか、呆れた人も多かったのではないかと思うのですが。
橋本:これは今に始まった話じゃないんですけど、民進党の最大の欠点って、メンバーが「リーダーに従おうという能力がない人たち」だと言うコトなんですよ。