今田耕司 (c)朝日新聞社
今田耕司 (c)朝日新聞社

 吉本新喜劇に入団し、お笑い芸人として舞台に立つなど活動した新津勇樹さん。今回は吉本新喜劇の知られざる稽古の舞台裏をリポートする。

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 私が所属していた頃の東京の吉本新喜劇は、大体半年から一年で作品が変わっていく。大阪だともう少し早く、毎月変わることもあると聞いた。当時の東京の吉本新喜劇の座長(お芝居の中の主人公、中心となる人物)は、今田耕司さん、東野幸治さん、陣内智則さん、板尾創路さん、木村祐一さん、ほんこんさん、石田靖さんという錚々たるメンバーだった。

 吉本新喜劇といえば、笑いあり、涙ありで、最後にオチありというのが基本の流れである。定番のギャグから、歌やダンスをはじめ、とにかく多くの笑いで観客を笑いの渦に巻き込む集団コメディーである。

 今回は、吉本新喜劇の稽古の話をしたいと思う。稽古は大体22時頃から始まり、早朝までというのが通例である。これは、日中から夜にかけてはタレントのスケジュールがつきにくいため、深夜早朝に稽古があてられるのであろう。

 劇場に入ると当時はお弁当があった。一番乗りで劇場入りする若手は、先輩方が来る前に弁当を流し込むように食べる。そして、若手は事前に渡された台本を初稽古までに何百回も熟読してきたが、楽屋の外でセリフ読みや動きの確認をしておく。

 徐々に出演者が集まり、座長が楽屋に到着すると、本読みが始まる。

 その時の座長によって違うが、ほんこんさんや木村祐一さんが座長の時は、楽屋の空気が緊張感に包まれ、逆に今田耕司さんや石田靖さんは、後輩にもフレンドリーに話しかけてくるため空気は明るいと感じた。これはあくまで私の経験した上での感想である。

 初稽古の際には、スタッフから挨拶があり、新喜劇に入りたての若手は、本読みの前に全員の前で、自己紹介をする。私の時は、インパクトを残そうと、バカでかい声で「吉本新喜劇に入団致しました。新津勇樹と申します。よろしくお願い致します」と挨拶してみた。

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