そんな子どもの様子を心配したお父さんも、この日をずっと楽しみに暮らしてきたおじいちゃま、おばあちゃまの期待に勝てず、「行くぞ」と連れて帰る……。そんなやりとりが全国各地の不登校家庭でくり広げられてきました。

 親の取り決めに最後まで徹底抗戦する当事者もいます。私の友人は、里帰り出発日、インスタントコーヒーの粉を食べてお腹を下させたり、トイレでのどに指を突っ込んで吐き続けたりして「体調不良」をアピールしました。

 いずれも決行したのは小学生時。もちろんですが絶対にマネはしないでください!

■周囲ができることは?

 里帰りが不登校にとって鬼門なのは、周囲の「励まそう」とする気持ちが空回りしてしまうからです。具体的なアドバイスが自己否定感を深めることにしかならず、逆効果になってしまうからです。

 不登校した本人は誰よりも自分を否定し、将来を悲観しています。けれども、まだ社会に出ていない時期は自分の悩みがどう解決されるか見えません。

 やるべきことはただ一つです。本人の安心を確保すること。

「(安心できる)安全基地があるからこそ、外で冒険ができるようになる」と、児童精神科医・高岡健さんは言います。

 残念ながら、おじいちゃま、おばあちゃま宅が「安全基地」と認められない時期もあります。でもそのときに「いつでも来たいときに」と言ってくれれば、安全基地へと変わっていく事例もたくさんあります。そのことは、ぜひ知っておいていただければと思っています。

 最後に、不登校の当事者、親、支援者たちが、たくさんの失敗と成功を重ねて紡ぎ出した結論をお伝えします。

「里帰りは希望者だけで!」

 これ以上の正解は、いまだ見つかっていません。
(文/石井志昂)

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