最後に、新渡戸の言葉を幾文か引用しておきます。
■2月3日「小人の尺度」
他人のことを無学だといって馬鹿にする人は、学問の深さに触れたことのない人だ。他人のことをケチだといって軽蔑する人は、自身がケチな人だ。他人のことをバカだという人は、その人自身、賢い人ではない。自分の弱点が無意識のうちに心を囚えて、それが他人をはかる尺度になってしまうのだ。
何事も知らぬがしつた とは
未だ凡夫の時の名なりし
*「しつた」は「知った」と釈迦の俗名「シッダールタ」をかけている
■7月12日「和して同ぜず」
逆境になっても迷うことなく、悪友の間にあっても惑わされず、はでな連中と付き合ってもうわつかない。そんな堅い意志をもってこそ真に賢い人である。周りに合わせるのは簡単で、小者にもできる。大人物は和を乱さないが、流されはしない。独立独歩とはそのような態度のことである。
水鳥は 水に棲めども羽も濡れず
海の魚とて 汐の染まめや
*塩が染み込むだろうか、いや染み込まない
(朝日新書『武士道的一日一言』より)