例えば、VHBテープは極めて衝撃に強い。両面テープの基本構造は、基材と呼ばれる真ん中の素材の両面に粘着剤が塗られたものだが、VHBテープの基材に使われている「アクリルフォーム」という素材は非常に柔軟性に富み、衝撃を吸収するのだという。一方で、接着剤は硬く固まることで物と物を接合するので、強い衝撃を受けたり、振動を受け続けたりすると割れてしまうことがある。

 また、極端な気温の変化にもVHBテープは強い。自動車や建物などに部品を取り付けるとき、問題となるのが気温の変化によって起きる金属の変形だ。ネジやリベットなどで部品を固定すると、金属が変形したときの力がそこに集中し、やがてはゆるんだり、壊れたりしてしまう。テープは物と物を面で接合しその変形に追従するため、これを避けることができる。

「こうした性質から現在では工業分野から家電など、さまざまな産業で利用されています。特に顕著な例が建築。ドバイのブルジュ・アル・アラブは、ガラスパネルをVHBテープでビルのフレームにくっつけて外壁にしています。テープが剥がれたらパネルが落下してしまうわけです。ドバイのような気温の変化の激しい地域でも、高いデザイン性と信頼性を担保できる接合方法として採用されたのです」

 ビルの外壁をテープでとめる。不安に聞こえるが、こうした利用はすでに珍しくないという。日本では地震の影響もあり施工例はほとんどないが、これまで世界では約3万棟のビルにVHBテープが使われている。

「それ以外に珍しい使用例としては、以前あるクライアントから『各店舗の金庫を固定したい』と依頼を受けたことがあります。金庫が小型なので持ち去られる恐れがあり、床や壁にとめておきたい、と。クライアントが提示した基準は『泥棒が諦めるくらい強固な固定』。VHBテープはそれをクリアし、採用されました」

●iPhone、まったく剥がれない

 泥棒が諦めるくらい強固に固定されてしまった記者のiPhoneはどうなったか。端的に述べたい。まったく剥がれない。

次のページ