カンヌ国際映画祭会場で取材に応じたアル・ゴア氏(撮影は筆者)
カンヌ国際映画祭会場で取材に応じたアル・ゴア氏(撮影は筆者)
この記事の写真をすべて見る

 アル・ゴア元米国副大統領は2006年5月、地球温暖化問題を訴える講演をドキュメンタリー化した映画「不都合な真実」を引っ提げてカンヌ国際映画祭に参加。その後、映画は反響を呼び、第79回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に輝き、07年には環境問題の啓発に貢献したとして、ノーベル平和賞が授与された。

 あれから11年。アル・ゴア氏が再び、カンヌ映画祭を訪れた。前作の続編にあたる『不都合な事実2:放置された地球』が特別招待作として上映されたのだ。

 1作目の時は政治プロパガンダで内容は真実ではない、と批判されもした。しかし、彼が指摘した予想は現実となった。

『不都合な事実2:放置された地球』は1年のうち300日は旅をするというアル・ゴア氏の生活をカメラが追う。

 グリーンランドで氷河が目の前で溶ける現実を見学したり、共和党が圧倒的な力を持つテキサス州ジョージタウンで、再生エネルギーを積極的に取り入れる共和党の町長を訪ねたり、トランプ大統領との話し合いの場を持ったり。

 現地でアル・ゴア氏を直撃すると、こう答えた。

「カンヌに来たのは、映画こそが私の伝えたい事を最も有効に伝える有効なコミュニケーション手段だからだ。11年前、私はスライドを使った講演を数百人を相手に行っていた。ところがその様子をドキュメンタリー映画に収めることを提案してくれた人がいた。それによって世界中の人が観てくれたんだ。映画は真実を伝えるための最も有効な手段だと思う」

 11年前に比べて地球の環境が改善しているとは言えない。ただ、再生エネルギー開発の目まぐるしい進歩でこれから環境改善に拍車をかけることになるだろうという。

「ソーラ発電、風力発電、電気自動車、様々な再生エネルギーの進化は目をみはるものがある。この問題の解決に光がみえてきた。そんな希望を見る人に与えられると思う」

 トランプ大統領とは当選した直後、面会した。ところが、トランプ大統領はアル・ゴア氏とは正反対のエネルギー政策を打ち出すと宣言。ふたりの間にどんな言葉が交わされたのか?

「彼の方針に私が同意しないことは伝えた。彼でさえも現実の世界で、驚くべき再生エネルギー革命が起こっていることは否定できないはずだよ」

 『不都合な事実2:放置された地球』は日本では今秋公開予定だ。(文・高野裕子)