悪しき大企業、ミランド・コーポレーションの社長である双子姉妹を演じるのはティルダ・スゥィントン、動物愛護テロリストをポール・ダノが演じる。

 プレス試写の後の会見でポン監督は「大きな予算をもらえ好きなように自由に作らせてもらった。ネットフリックスからの制作に対する介入は一切なかった」と語った。

 オクジャと少女が山中で生活するシーンは、自然の美しさや尊さを映像で見せつけるかのよう。

 これらのシーンについて「スタジオ・ジブリの宮崎駿さんに影響を受けたのでは?」という質問が相次いだ。

ポン監督は「宮崎さんをはじめ、今村昌平監督や野村芳太郎監督などの日本映画にも影響をうけた」と語った。

 長編映画製作の最大の難関はなんといっても大型予算を集めること。予算が大きくなればなるほど出資者の介入が多くなり、脚本家や監督は多難な制作過程となる。

 ところが近年はネットフリックスやアマゾンといった企業がテレビ・ドラマ、長編映画の世界にも出資するようになった。より大規模な予算で、アーティスティックな点で妥協をせずに制作する機会をもらえるという理由で、映画界の名監督も進んでアマゾンやネットフリックスと共作するようになっている。

 今や長編映画、テレビ・ドラマ、オンライン・ゲームなどの境界線が不確かになってきた事実を、業界の関係者の間では広く認識されている。

 今回のカンヌ映画祭で映画館とストリーミングの対立問題が浮上したが、進化する映像産業の最前線なので、有効な対策が求められる時期だと痛感させられた。

(文・高野裕子)

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