ネットフリックスをめぐり、意見が割れた今年のカンヌ国際映画祭の審査員たち。 (左から5番目)審査委員長のペドロ・アルモドバル(映画監督・スペイン)とウィル・スミス(俳優・アメリカ)ら
ネットフリックスをめぐり、意見が割れた今年のカンヌ国際映画祭の審査員たち。 (左から5番目)審査委員長のペドロ・アルモドバル(映画監督・スペイン)とウィル・スミス(俳優・アメリカ)ら
オクジャ@Netflix
オクジャ@Netflix
撮影/yuko takano
撮影/yuko takano
撮影/yuko takano
撮影/yuko takano

 70周年を迎えた世界の3大映画祭の1つ、カンヌ国際映画祭が開幕したが、頻発するテロに対する警戒態勢は昨年にも増して厳重となり、劇場やイベント会場の入り口のチェックは空港並みで、どこの入り口にも長蛇の列ができた。

 初日に審査員の記者会見が行われたが、ここで最高賞パルムドールを競うコンペ部門に、劇場公開の予定のないネットフリックス(Netflixl)のストリーミング作品の『Okja(オクジャ)』と『The Meyerowitz  Stories(メイロウィッツ・ストーリー) 』がノミネートされたことについて、大きな論争が巻き起こった。

 そもそもの発端は映画祭直前に、インターネット上で映像、音声などをユーザーに送信し、劇場公開をしないストリーミング作品についてフランス映画館連盟(FNCF)が「フランスの法律に反している。コンペで上映すべきではない」と抗議したこと。

 その結果、来年度から劇場公開されない映画はカンヌ映画祭のコンペには入れないことが決定した。

 記者会見でこの点について質問された、審査員長を務めるスペインの映画界の巨匠・ペドロ・アルモドバルが「個人的には、劇場公開されない映画が最高賞を受賞することは想像できない」と発言。映画館連盟の立場を擁護した。

 しかし、審査員の一人である米俳優のウィル・スミスは、「僕の10代の子供たちは映画館にも行くし、家では映画館で観れない映画をストリーミングで観ているので、支障はない」とコメントし、論争は解決するどころか、さらに炎上した。

 今年コンペ部門に選ばれた渦中の1本であるネットフリックスの『オクジャ』は米韓共同制作による韓国のポン・ジュノ監督の最新作だ。

 豚のような見た目の巨大な生き物を『オクジャ』と名付け、韓国の山奥で育ててきた少女ミジャ(アン・ソヒョン)の物語だ。CGIで創り出したオクジャは巨大で愛らしい。

 食肉加工を手掛ける多国籍企業ミランド・コーポレーションがオクジャをニューヨークへ連れて行こうと画策。オクジャを救うため、立ち向かうミジャの成長、遺伝子組み換えや自然保護、動物愛護、マスコミ、資本主義などをユーモアと涙、アクション満載で描く。

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