商品の価格は、店頭価格プラス10円。買い物弱者に役立ち、販売パートナーや地元スーパー、とくし丸が利益を挙げられるビジネスモデルは全国に広がり、17年4月27日現在、36都府県で208台が活動している。地域の提携先のスーパーは65社に上る。
淡路島では、17年3月中旬から、地元スーパー、マイ・マート(本社・洲本市)が、洲本市内で運営を始めた。まずは自社で販売パートナーにも取り組もうと、軽トラック1台を導入、希望があった約200世帯を3つのエリアに分けて、それぞれ週2回、軽トラックで訪問している。
17年4月中旬、とくし丸の営業に同行させてもらった。淡路島は国道や県道などの幹線道路から少し入ると、車1台ぐらいの幅しかない細い道が多い。スタッフの男性は「前は百貨店に勤めていたので接客は苦じゃないが、運転が大変。停車する時も気を遣う」と苦笑いする。
県道から砂利道に入り、坂の上に建つ民家の前に止まると、1人暮らしの80代の女性が出てきた。細巻きやパン、サラダ、煮物などを買う。「これで十分。煮物を炊くと汁が残るし」とほほ笑む。
女性は普段は自転車で買い物や病院に行くが、荷物を持って坂の上にある自宅まで帰るのはつらい。近くに娘家族が住んでいるが、子どもが数人いるため、なかなか頼みづらい。そんな女性にとって、玄関先まで来てくれるとくし丸はありがたい存在なのだ。「(とくし丸が)来てくれるとだいぶ違う。選ぶ楽しみがあるし、『こんなんほしいんやけど』と頼んだら持ってきてくれるし」と話す。
土の道を通って住宅地に入り、民家の前で停車すると、周りの家々から、数人の住民が集まってきた。住民らは世間話をしながら、買い物をする。夫と訪れた70代女性は、煮物やちりめんじゃこ、ロールケーキなどを購入。
「車に乗らんので、こうやって近くまで来てくれると助かる。同居している息子もいるけれど、仕事があるし、休みの日でもそうそう(買い物に連れていってと)頼めんから。ひじきやおからがあればすぐに間に合うし、作らんでいい」