韓国に移住したものの、所属は和歌山県海南市に本社を置く、ガーデンライフスタイルメーカー「タカショー」のままだ。坂爪は群馬県太田市出身で日体大を卒業後、国体の開催県が天皇杯順位(男女総合成績)アップを狙って有力選手を受け入れる、いわば“輸入選手”としてタカショーに就職した。
同社総務部の担当者によると「当初は15年の紀の国わかやま国体まで」という予定だったが、「平昌五輪まで頑張りたい」という坂爪の意向を受けて契約を延長した。韓国での武者修行を資金面で支援している。
「課題はスピードだったが、韓国でみっちり練習することで余裕が生まれた。また、ショートトラックは駆け引きや戦術がものをいう競技。いろんなパターンを想定してレースを積むことができている。(韓国へ)行ってよかった」(坂爪)
4月上旬、坂爪は一時帰国した。富山市内で競技の普及に苦心している同郷の先輩から「小学生を指導してほしい」と依頼を受け、臨時コーチを務めるためである。米国に住んでいた幼いころにショートトラックと出会い、なぜのめり込んでいったのかを熱く語った。韓国での練習の様子や食事のメニューを写真で紹介すると、ほかの競技に取り組む子どもたちも関心を示した。最後は「自分が今、一生懸命やっていることを無我夢中で追いかけてほしい」と子どもたちを激励。「本番ではメダル争いに絡めるよう頑張る」と言い残して韓国へ戻っていった。
平昌五輪開幕まで10カ月を切り、秋から冬にかけて行われる五輪選考レースまでは約半年しかない。「自分が活躍すれば、ショートトラックの魅力を理解してもらえる」と坂爪。決戦の地・韓国で、納得のいく練習ができている充実感が伝わった。(ライター・若林朋子)