国内では、その前年、大津市のスキー場「サンケイバレイ」(現びわ湖バレイ)が初めて導入している。しかし、維持費がかさむなどとして、サンケイバレイのカーレーターは75年に廃止。須磨浦山上遊園でも、他の乗り物への転換が検討されたこともあったが、独特な乗り心地が評判となり、残った。現在、国内で現存しているのは同園のみだという。

 その微妙な乗り心地ゆえ、メディアでもしばしば取り上げられ、2017年2月放送のテレビ番組「ブラタモリ」(NHK)にも登場。タモリさんが揺れに戸惑いつつ、何とも言えない表情で乗る様子が話題となり、放送後しばらくは、利用者が1.5倍から2倍に増えたという。

 メンテナンス担当の男性スタッフによると、搬器は導入当時からほとんど変わっておらず、「(乗り口に)ドアが付いたぐらい」だという。国内でここだけ、しかも古い乗り物のため、交換部品はオーダーメードすることもあり苦労も多いが、こつこつと点検、修理を繰り返して動かしているという。

「乗り心地の悪さ」が売り(?)だが、意外にも「構造上仕方がない部分もありますが、乗り心地を良くするために頑張っています」とのこと。搬器の振動を少しでも和らげようと、発着時のゴム車輪の高さや位置を段差が出ないように調整するなどの工夫をしているのだという。長年同園で勤務する女性スタッフは「昔と比べると、振動は少なくなりました」と話す。

 男性スタッフが、カーレーターの点検、整備をするようになって約5年。「私たちは乗り心地を良くしよう、良くしようと努力しているんですが、お客さんは、みんな笑顔で乗るんですよ。少し矛盾を感じます……」と複雑な表情で語る。

 カーレーターの利用料金は、片道200円、往復300円。須磨浦山上遊園には、回転展望閣や鉢伏山と隣の旗振山とを結ぶ須磨浦観光リフトなど、見どころも多い。カーレーターと共に、施設全体に漂う“昭和感”も楽しんでほしい。(ライター・南文枝)

【揺れを疑似体験!? カーレーター上り動画】
https://youtu.be/jTETZl1fYu8

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