「乗り心地の悪さ」が評判のカーレーター。開通50周年を記念し、2016年、搬器18台中1台を、乗客の幸運を願いピンク色に塗り替えた
「乗り心地の悪さ」が評判のカーレーター。開通50周年を記念し、2016年、搬器18台中1台を、乗客の幸運を願いピンク色に塗り替えた
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ローラーの上に敷かれたベルトコンベヤーに乗って進む
ローラーの上に敷かれたベルトコンベヤーに乗って進む
1966年、開通時の様子を伝える記事(山陽電鉄提供)
1966年、開通時の様子を伝える記事(山陽電鉄提供)
鉢伏山の山頂と遊具などがある旗振山の山頂とを結ぶ須磨浦観光リフト。ちょっと怖そう
鉢伏山の山頂と遊具などがある旗振山の山頂とを結ぶ須磨浦観光リフト。ちょっと怖そう
山陽電車の須磨浦公園駅からカーレーターの乗り場まではロープウエーで移動する
山陽電車の須磨浦公園駅からカーレーターの乗り場まではロープウエーで移動する

 神戸市の須磨浦山上遊園にある「カーレーター」。タレントのタモリさんも体験したこの乗り物、実は「乗り心地の悪さ」に定評があるという。気になる乗り心地を取材した。

 同園の最寄り駅である山陽電車・須磨浦公園駅からロープウエーに乗り、鉢伏山上駅(標高約210メートル)で降りると、カーレーター乗り場に着く。カーレーターは、この駅と、今ではすっかり珍しくなった回転展望喫茶「回転展望閣」がある山頂(同246メートル)とを結んでいる。

 乗り場では、急こう配の坂に沿って伸びたベルトコンベヤー(長さ91メートル)の上を、洗濯かごのような形をした鉄製の乗り物「搬器」が、ガタゴトと音を立てながら進んでいる。

 ベルトコンベヤーには上りと下りがあり、坂を下ってきた搬器は、ベルトコンベヤーからゴム車輪を並べた部分を通って降り場にやって来る。その後はターン部を通り、上がっていくのだ。乗り場にやって来た搬器に、メンテナンス担当の男性スタッフと一緒に乗り込んだ。

 搬器は2人乗りで、座席にシートをかぶせただけのシンプルな構造だ。大人2人はちょっと狭い。搬器はゆっくりと山頂へ向けて動きだした……途端に、ガッタンガッタンという振動に見舞われた。男性スタッフによると、ゴム車輪の上を通る発着時が一番揺れるらしい。揺れは、坂の中腹で少しましになる。しかし約2分後、降り場に近づくと、再びガッタンガッタンと揺れ出した。

 ちなみに同園のホームページには、「『いもむし』に乗った感じをお楽しみください」と書かれている。上下に揺れるため、いもむしの背中に乗ったような感覚が味わえる、ということだそうだが、いもむしというか、トロッコに積まれた石になったような気分だ。快適とはほど遠いが、なんだろう。予測できない揺れに、思わず笑ってしまう。下り側の搬器に乗った人たちも楽しそうだ。

 娘と訪れた神戸市の50代女性は「(急坂に対して座席が水平なため)景色がすごく斜めになって見えるのが面白い。もっと長くてもいいのに、あっという間に終わっちゃう」とうれしそう。3歳の男の子を連れた母親も「最初はガタガタして息子が怖がっていましたが、楽しんで乗っていました」と話す。

 カーレーターとは、「カー」(車)と「エスカレーター」を組み合わせた造語で、1966年、雨の日でも急坂を座ったままで上れる、屋根付きの「動く登山道」として開通した。一般的なベルトコンベヤーやエスカレーターと違い、途中で速度が変わる点などが魅力的だったそうだ。現在運航している搬器は18台だが、開通当時は44台あった。

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