神戸市の須磨浦山上遊園にある「カーレーター」。タレントのタモリさんも体験したこの乗り物、実は「乗り心地の悪さ」に定評があるという。気になる乗り心地を取材した。
同園の最寄り駅である山陽電車・須磨浦公園駅からロープウエーに乗り、鉢伏山上駅(標高約210メートル)で降りると、カーレーター乗り場に着く。カーレーターは、この駅と、今ではすっかり珍しくなった回転展望喫茶「回転展望閣」がある山頂(同246メートル)とを結んでいる。
乗り場では、急こう配の坂に沿って伸びたベルトコンベヤー(長さ91メートル)の上を、洗濯かごのような形をした鉄製の乗り物「搬器」が、ガタゴトと音を立てながら進んでいる。
ベルトコンベヤーには上りと下りがあり、坂を下ってきた搬器は、ベルトコンベヤーからゴム車輪を並べた部分を通って降り場にやって来る。その後はターン部を通り、上がっていくのだ。乗り場にやって来た搬器に、メンテナンス担当の男性スタッフと一緒に乗り込んだ。
搬器は2人乗りで、座席にシートをかぶせただけのシンプルな構造だ。大人2人はちょっと狭い。搬器はゆっくりと山頂へ向けて動きだした……途端に、ガッタンガッタンという振動に見舞われた。男性スタッフによると、ゴム車輪の上を通る発着時が一番揺れるらしい。揺れは、坂の中腹で少しましになる。しかし約2分後、降り場に近づくと、再びガッタンガッタンと揺れ出した。
ちなみに同園のホームページには、「『いもむし』に乗った感じをお楽しみください」と書かれている。上下に揺れるため、いもむしの背中に乗ったような感覚が味わえる、ということだそうだが、いもむしというか、トロッコに積まれた石になったような気分だ。快適とはほど遠いが、なんだろう。予測できない揺れに、思わず笑ってしまう。下り側の搬器に乗った人たちも楽しそうだ。
娘と訪れた神戸市の50代女性は「(急坂に対して座席が水平なため)景色がすごく斜めになって見えるのが面白い。もっと長くてもいいのに、あっという間に終わっちゃう」とうれしそう。3歳の男の子を連れた母親も「最初はガタガタして息子が怖がっていましたが、楽しんで乗っていました」と話す。
カーレーターとは、「カー」(車)と「エスカレーター」を組み合わせた造語で、1966年、雨の日でも急坂を座ったままで上れる、屋根付きの「動く登山道」として開通した。一般的なベルトコンベヤーやエスカレーターと違い、途中で速度が変わる点などが魅力的だったそうだ。現在運航している搬器は18台だが、開通当時は44台あった。