タイ戦では4-0というスコア以上に苦戦を強いられた日本代表。(写真:Getty Images)
タイ戦では4-0というスコア以上に苦戦を強いられた日本代表。(写真:Getty Images)
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 3月28日、埼玉スタジアム。ロシアW杯アジア最終予選、日本はグループ最下位のタイを迎え、4-0と勝利した。これにより、得失点差でサウジアラビアを上回り、首位に躍り出た。

 しかしタイ戦は、「過去1年の代表戦でワーストゲームの一つ」というのが実状だろう。FIFAランキングで127位の"草刈り場"タイに対し、ろくにビルドアップもできず、パスをつながれ、崩される場面が相次いだ。組織としての機能が欠如。岡崎慎司、久保裕也の決定力、川島永嗣のゴールキーピングという単純な個の力の差で試合を制したに過ぎない(とりわけ岡崎は90分間プレーの質が落ちず、プレミアリーグ王者の一員として違いを見せた)。

「パーフェクトな試合だったとは言えないだろう」

 試合後の会見では、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も錯綜する心中をそう明かしている。

「攻撃では、選手同士の距離感が悪かった。それぞれが連動せず、ビルドアップが困難になった。経験不足、コンディション不良も考えられるが、ゲームマネジメントにも欠けており、あまりに簡単なパスミスがあった。我々は、この試合から教訓を得なければならない。ただ、ネガティブなことばかり伝えているようだが、ポジティブなこともあり、4-0で勝ったということも伝えて欲しい」

 勝利は得た。讃えるべきだろう。しかし、内容は乏しかった。それを痛感しているのは、誰よりもまず、監督であり、選手たちだろう。

「カバーしきれないスペースがあった」

 ボランチに抜擢された酒井高徳は、真っ先に反省を口にしている。酒井高はピッチの中で迷子になったような状態だった。お互い補完しなければならない山口蛍も、連係する力に欠けていた。二人のボランチは動きすぎて安定せず、長谷部誠の不在が顕著だった(昨年10月のオーストラリア戦は長谷部が舵を取り、戦術的にはベストゲーム)。前半からそれぞれパスミスが多く、後半は機能停止したに等しい。

 では、収穫は一つもなかったのか?

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