「受験勉強が大変で、本を読む暇なんてない!」という声もあるけど、受験生である今だからこそ、読むべき本がある。アエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』では、医学部を志望する学生に向けて「今、読んでおくべき本」を、産婦人科医の宋美玄医師に推薦してもらった。
■龍馬のように大局を見て、医療者と非医療者をつなぐ医師になる!
受験生の頃も医学生になっても、小説ばかり読んでいました。小さい頃は星新一や氷室冴子に始まり、特に中島らもが大好きで全部読んでいました。学校がミッション系だった
ので、三浦綾子や遠藤周作とかもよく読んでいましたね。
父が医者で、医師になるのが自然という感じでした。そのせいか、あまり学生時代に医療関係の本は読んでいませんでした。そもそも医学部に入れなければその先もないわけで……。医療系の本やノンフィクションを読むようになったのは、研修医が終わってからでしたね。
医師になって感じたことは、例えば「女性は高齢になると出産できなくなる、という知識がなかったから少子化が進んでいる」なんて言われていますが、これは患者さんの知識不足だけでなく、さまざまな社会的要因が重なり合ってのこと。一方的に「知識がない」と決めつける医師がいるのも事実ですが、そのように上から目線ではなく、社会的背景や生活環境から、知識や情報が行き届いていないと思うことは確かにあります。
だから私は、龍馬のように広い視野で、患者さんの背景にあるものや、社会全体の問題を見ながら、医療者と非医療者の間をつなぐ医師でありたいと考え、情報発信を続けています。
現場がおろそかになると、発言に魂がこもらなくなるから、臨床も大事にしています。
龍馬はすごすぎる人。でも、私も負けずにその志を持ち続けていたいと思っています。
■宋美玄医師が推薦する3冊
(1)『竜馬がゆく』(1~8巻)(文春文庫)/司馬遼太郎著
飛び抜けた行動力と人間的魅力で幕末維新を駆け抜けた坂本龍馬の生涯を描いた長編小説。「医学生か研修医の頃に読みました。浪人という立場でありながらグローバルな視点で世界を見ていた龍馬の姿に、私も龍馬みたいに大局を見て行動できる医師になる!と感銘を受けました」
(2)『女のカラダ、悩みの9割は眉唾』(講談社+α新書)/宋美玄著
「恋しなくても女性ホルモンは出る」など、医学的根拠のない情報に振り回されないための一冊。「医師は医学の知識はあっても、一般の人がどんな情報に振り回されているかは分からないもの。健康情報に関して、医師と患者さんの間にはこんなに開きがあるのをぜひ知ってほしい」
(3)『今夜、すべてのバーで』(講談社文庫)/中島らも著
アルコール依存症の男が見た、幻覚の世界と妙に覚めた日常そして周囲の個性的な人々を描いた小説。「最近、薬物問題が注目されていますが、中島らも自身アルコール依存症だったので、当事者がどう思っているかがよくわかるんです。これはすごく役に立つんじゃないかな」
(構成/吉川明子)
※アエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』より抜粋