画面の片隅には刃物を握りしめ、拳銃を発砲する暴力団風の男性が描かれているのだが、マウスを動かすと、なんとこの男性がマウスカーソルを追いかけてくるのだ。さらにページをスクロールしていくと、「驚愕の割引プラン ムショ割・出所割」「正解者全員プレゼント企画!スジモンGO」「ここは、凡人は秒速で悪党に、悪党は一瞬で極悪人になれるお店です。」など、日常で使用するボキャブラリーとは大きく乖離した文句で埋め尽くされており、ただただ圧倒されるしかなかった。

 たしかにサイトのインパクトはピコ太郎氏のPPAPに勝るとも劣らない。そこで気になるのは、一体店長はどんな人物なのか、ということだ。意を決して電話取材を申し込んだ。

●店長はとても礼儀正しい

「この度は当店に関心を抱いて頂き、ありがとうございます」

 予想に反して、受話器から聞こえてきた声は穏やかで、どこまでも礼儀正しい。この声の主がバースジャパン店長・石川智之氏(34)。サイトのデザインから、販売する衣服のデザインまで手がけるという同氏に、なぜこのようなサイトをつくったのかを尋ねると、「自分自身の美学を表現したかった」という答えが返ってきた。

「当店はいわゆる不良と呼ばれる人々に向けた衣料品を販売していますが、実は私も20代前半までは不良で、人様に顔向けできないようなこともしてきました。現在は更生しましたが、不良の美学はいまだ自分の中心にあります。不良の美学とは、世間様の常識と相容れないところがあったとしても、自分なりの『格好良さ』を追求することだと思っています。その結実が当店のサイトです」(石川氏)

 サイトをデザインする際にもっとも重視したのは「ひと目見た時のインパクト」だという。

「一度見たら決して忘れられないデザインにしたかったのです。というのも、これは多くの洋服通販ショップが抱える悩みなのですが、商品を購入していただいても、どのお店で買ったか覚えてもらえることは少ない。自分の考える『不良の格好良さ』とは『強さ』や『恐ろしさ』。これを徹底的に強調することで、長く親しんでいただけるサイトがつくれたと思っています」(石川氏)

 石川氏の狙いは見事に的中し、サイトはこれまでも多くのメディアに取り上げられ、不良ファッションの金字塔として確固たる地位を確立している。しかし一方で、単に「恐ろしさ」だけを強調するデザインにはしたくなかったとも語る。

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