「伝説のディーラー」と呼ばれ、投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表を務める藤巻健史氏は、6月に外債運用を始めた群馬銀行を「さすがだ」と評価する。その理由はとは?

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 6月22日付の日本経済新聞に「群馬銀、外債運用を開始」という記事が載っていた。「余資運用の対象は日本国債を中心とした円建て資産に限ってきたが、日本の長期金利が急上昇する可能性を無視できないとみて、運用先を分散する。このほど米国、ドイツ、オーストラリアなど格付けが相対的に高い国の債券に約500億円を投資した」という内容だった。

 財政破綻になれば日本国債は暴落(長期金利は急騰)する。また「そんな国の通貨などいらない」ということで円も暴落する。その事態に備えて、「円をドルに替えての外債投資」を保険の意味で始めたということだ。群馬銀行はさすがだと思う。

「邦銀は昔から外債投資をかなりやっているではないか? 何をいまさら」と思われる方も多いだろう。それに、「決算日が近づくと新聞紙上にリパトリエーション(利益確定をして資金を日本に引き揚げる『資金回帰』のこと)という言葉が躍るではないか? 外債をかなり保有しているからこそ起きる行為のはずだ」と思われる方も多いだろう。

 確かに邦銀は外債を大量に保有している。しかし例えば、米国内でドルを借りて米国債を買っているのだ。安い金利のドルを短期で借りてきて、金利が高い長期のドル建て米国債で運用する。金利差を稼ぐことを目標とした操作だ。群馬銀行が始めた「円をドルに替えて外債を買う」という為替を伴う操作は、為替のリスクを背負うだけに、ほとんど行われてこなかった。だからニュースになった。

※週刊朝日 2012年8月3日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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