4度目の五輪金メダルを獲得した女王は、試合直後、安堵の表情を見せた。リオ五輪のレスリング58キロ級で、伊調馨が金メダルを獲得。五輪史上初となる、女子個人種目4連覇という記録を打ち立てた。
過去3回、金メダルに輝いている伊調は、今大会も終始危なげない試合運びで決勝まで駒を進めた。初戦から相手に10点差をつけるテクニカルフォール勝ちをし、準決勝に至っては開始わずか2分20秒で10点を獲得。
ここまで圧倒的な強さで勝ち上がった伊調だったが、決勝では最後の最後まで苦しめられた。相手は、ロシアのワレリア・コブロワゾロボワ。伊調は試合序盤に1点を先取したが、その直後に相手が伊調の足を取り、2点を獲得。1-2で逆転を許し、前半の第1ピリオドを終える。
追う立場で迎えた第2ピリオド。攻めるしかない状況に追い込まれた伊調だったが、ここでも攻めきれず、得点を重ねることができない。相手にリードを許したまま時間は経過し、試合が動いたのは試合時間が残り約30秒となった終了間際。相手に足をとられたが、組み合いながらなんとか相手のバックにまわり2点追加で逆転したのは、なんと試合終了の約3秒前。最後の最後まで手に汗握る展開のなかでみせた、大逆転劇だった。
試合を終えた伊調は、その内容を次のように振り返った。
「内容があまり良くなかったんですけど、こうやってたくさんの人に喜んでいただいて。でももっといい試合したかったです。(最後は)相手がタックル入ってきてくれたので、最後のチャンスだと思って。ここしかないと思って取りに行ったんですが、取れてよかったです」
また、伊調は2014年に亡くなった母・トシさんについても触れ「最後はお母さんが助けてくれたと思います」とも話した。
試合前には「(女子)初日のプレッシャーをはねのけて(吉田)沙保里さんつなげたい」とも話していた伊調。伊調の決勝の少し前には、48キロ級では登坂絵莉が金メダルを獲得している。次は絶対女王・吉田の金メダルに期待がかかるが、このレスリング女子好調の波に乗って、4連覇を成し遂げることを期待したい。(文・横田 泉)