神戸の西、播州地方にある姫路市。「平成の大修理」を終え、美しくなった世界文化遺産・国宝姫路城が有名だが、実は、独自の食文化をはぐくんできた「食のまち」でもある。
姫路には、不思議な食べ物が多い。おでんにショウガじょうゆを付けて食べる濃厚な「姫路おでん」は、昔から一般の家庭で食べられてきた。ソースを塗ったたこ焼きをわざわざだし汁につける「姫路玉子焼き」、焼きそばと焼きうどんを合わせた「ちゃんぽん焼き」、卵を産まなくなった鶏肉を焼いてスライスしたものにポン酢をかける「ひねポン」なんて食べ物もある。
その中でもソウルフードとして親しまれ、かつ有名なのが「えきそば」だ。地元のまねき食品が、1949(昭和24)年から姫路駅のホームで販売しているのだが、一般的な駅の立ち食いそばとはひと味違う。めんは黄色い中華めん、スープは濃い目の和風だしなのだ。食べるとどっしりとした、甘じょっぱい風味が口の中に広がる。あっさりとした見た目に反し、なかなかインパクトのある味だ。
中華めんと和風だしという、不思議な組み合わせにも驚くが、さらに驚くべきはその進化系、JR姫路駅構内にある「おむすびひさご」で2016年3月から販売されている、「えきそばパフェ」だ。素揚げされたえきそばのめんの上にソフトクリームが載った、なんとも不思議な見た目である。ソフトクリームには、天ぷらや桜エビ、ネギに見立てた抹茶パウダーをトッピング。お値段はえきそばと同じ、360円(税込み)だ。
恐る恐る口に入れると、確かにえきそばの味が! パリパリとした食感の素揚げめんには、粉末の和風だしやチョコレートソースがかけられ、独特の甘じょっぱさが再現されている。おいしさよりも、むしろ面白さが際立つ味だが、なんでまたこのような食べ物を作ってしまったのか。
まねき食品によると、えきそばの客層が年々高齢化する中、「若い人にもえきそばの味を知ってもらいたい」と考えていた2015年末、兵庫県立姫路商業高校から新商品の開発を持ちかけられる。
3年生約70人から提案された300を超える案から、「面白いし、若い子に食べてもらえるかも」という理由からパフェを採用。「大量の生ネギをトッピングする」「えきそばを丸めて揚げる」「ブルーハワイゼリーを入れる」といった自由かつざん新なアイデアを検討しながら、10回以上の試作を重ねて完成させた。