熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城の修復に向けた活動が始まった。18日からは国土地理院が熊本城に調査に入り、崩壊した石垣の形状を記録するなど、復旧の足ががりになるデータの収集を開始した。
あらためて被害の状況を見てみると、重要文化財(重文)の指定を受けている13の施設のうち、東十八間櫓(ひがしじゅうはっけんやぐら)、北十八間櫓(きたじゅうはっけんやぐら)、不開門(あかずのもん)などは、今回の地震で完全に倒壊している。比較的被害が軽微だった平櫓(ひらやぐら)や宇土櫓(うとやぐら)のようなものもあるが、これらを含めすべての重文の施設が何らかの被害を受けている。
また復元建物群も瓦が落ちるなど、大きな被害を受けた大天守閣や、足元の石垣が大きく崩れた飯田丸五階櫓をはじめ、2014年9月に復元されたばかりの馬具櫓(ばぐやぐら)なども被害をうけた。
また、熊本城と言えばその特徴は、上部に行くほど傾斜がきつくなる「武者返し」といわれる優美で堅固な石垣だが、これも多くの地点で崩壊している。築城当時、この石垣を積み上げた近江の石工集団「穴太衆」の末裔である粟田建設の粟田社長によれば、現代の技術でも武者返しの勾配を再現するのはかなり難しいとのこと。また、櫓などの建物の土台に当たる石垣のゆがみや崩れは、被害を逃れた部分を傷つけないように重機などの使用が制限される中での修復作業となりより困難となることも予想されるという。
修復に必要な費用も相当な高額になると予想される。すでに日本財団が30億円の支援を表明しているが、熊本市でも熊本城の修復再建のために「熊本城災害復旧支援金」を募っている。熊本城は熊本県のシンボル的な存在であり、復興の精神的支柱となるであろうランドマークだ。復旧には長い年月がかかることが予想されるが、その優美な姿が1日も早くよみがえることを祈りたい。