遺言書には遺言者の思いが込められています。週刊朝日ムック『はじめての遺言・葬式・お墓』(朝日新聞出版)に掲載された5つ実例から、自分の思いを確実に実現するために、遺言書にどんな配慮がなされているかを見ていきましょう。監修は行政書士の竹内豊さんです。
【CASE1】独身の二女が老後に困らないよう、財産を残したい
82歳のAさんにとって最大の気がかりは、40代半ばを過ぎても独身でいる二女のことでした。二女は転職を繰り返していたため、定年まで勤め上げても退職金は期待できそうにありません。そこでAさんは、二女の老後資金の足しにしてほしいと、自分の財産をすべて二女に相続させる内容の遺言書を作成しました。
この内容では、長女が自分の相続分がないことに不満を抱く可能性があります。そこでAさんは、長女には結婚の支度金など生前に贈与をしたことを説明し、遺留分の請求をしないよう付言事項でメッセージを加えました。
【CASE2】前婚でもうけた子と再婚相手に財産を円満に相続させたい
元会社員のBさん(75歳・無職)は、前妻と死別後に再婚した。前妻との間に娘が1人いるが、後妻との間に子どもはいない。自分が死んだ後も妻と娘が円満に暮らしてほしいと願い、遺言書を作成。妻には老後資金として現金を多く残し、娘には妻が亡くなった際の二次相続の負担を軽くするため、妻と同居している自宅を相続させることにしました。ただし、娘には妻が亡くなるまで自宅を処分しないよう、付言事項に書き加えました。現預金は妻6割、娘4割の割合で相続させ、娘が先に死亡した場合は、孫に相続させるようにしました。
【CASE3】先に子どもが亡くなり(逆縁)、孫の中に音信不通者がいる
Dさん(92歳・無職)は、夫に先立たれ、二世帯住宅(長男と共有)で長男夫婦と同居中です。長女は娘2人を残して亡くなりました。そのため、Dさんが死亡した場合は長男と孫2人(亡き長女の子)が相続人となりますが、孫の1人とは連絡が取れません。相続人全員で話し合う遺産分割協議が難航すると見て、Dさんは遺言を残しました。遺言書があれば、遺産分割協議をしなくても遺産分けができます。