復刻版の漫画『翔んで埼玉』(宝島社)が話題の魔夜峰央(まや・みねお)さん。1978年に初掲載された『パタリロ!』(白泉社)は、ほぼ休載することなく今も連載を続けている。魅力的な作品の裏話や、仲が良いことで評判のご家族について話を聞いた。
――ギャグを中心としながら、ホラー、ミステリー、SF、時代劇、ハードボイルド、ロマンス……本当に幅広い話を描かれています。これだけ長く連載を続けられていても、ストーリーには困ったことがないと聞きました。
考えないで思いつきで描き始めちゃうんです。たとえば原稿30枚の『パタリロ!』だったら、最初の22、3枚が起承転結の「起」ですね。残りで「承転結!」と。よく読むとわかりますが、ラスト3枚なんですよ。ラスト3枚がなければ、それがSFなのか時代劇なのか、どういう話なのか全然わからない。ちょっと大げさですけど、そんな感じなんですよ。
――思いつきで、あれだけ面白い多様なストーリーを生み出せるものでしょうか。
いやいや、本当の意味でのストーリーテラーではありませんからね。見よう見まねでなんとか、という感じです(笑)
――自らのキャラクターの中では、魔界の公爵・アスタロトがお気に入りだと伺いました。
好きなんだけど、描きづらいし動かしづらい。ベールゼブブというライバルを設定したので動かせるようになりましたが、1人じゃ動きようがないですね。魔法で何でもできちゃうというのは、逆に何もできないのと一緒です。アスタロトは投稿時代に作ったキャラクターなんですよ。「別冊マーガレット」の「別マまんがスクール」に6本くらい投稿した作品のうちの一つでした。当時、プロの漫画作品の複製原画を読者にプレゼントするという企画があったんです。私はまだデビューしていないのに、「アスタロト」がそれに選ばれて、「みなさんの参考にしてください」と言われたのはちょっと自慢です。絵だけは自信がありますからね。
――『翔んで埼玉』もそうですが、30年以上前の漫画であるのに全く絵の古さを感じません。昔から絵を描くのはお好きだったんでしょうか?
そうですね、子どもの頃からよく落書きはしていました。高校生くらいからちゃんとコマを割って描いてみようと思って、それから練習を始めたという感じです。
――ずっと連載を続けていて、休みたいとは思ったことはありませんか?
思ったことはないですねえ。続けることが苦にならないタイプなんです。最初はストーリーのない怪奇ものや妖怪ものを描いていて、絵さえあればいいだろうと思っていたんですよ。ある時、やっぱりストーリーもないといけないのかなと思うようになって、考えるようになったのは……パタリロの連載を始めてからですかね。ずいぶん遅まきな話です(笑)