韓国でも待機児童問題は深刻…(※イメージ)
韓国でも待機児童問題は深刻…(※イメージ)

 韓国・保健福祉部の資料や各種報道によると、ソウル市における待機児童数は、ここ数年、約10万人前後(全国では46万人、2014年10月現在)で推移している。東京都が正式に発表している都内の待機児童数は、7814人(15年7月23日現在)。ソウル市には、東京都の約12倍以上の待機児童がいることになる。ただ韓国でいうところの待機児童は、日本のそれとは定義が少し異なるので、少々補足や説明が必要かもしれない。

 韓国で、いわゆる“待機児童”と呼ばれて対象は、主に国公立の育児施設への入園を希望しているものの、入園できない子供たちとなる。例えば、首都・ソウルでは、国立および私立保育園は割合が13対87(15年1月現在)で、圧倒的に私立および民間運営が多い。そちらに通いながらも、国公立への入園を希望・待機する児童も「待機児童」としてカウントされることになる。ちなみに日本の場合、入園できる保育所があるのにもかかわらず、希望する保育園に空きがないため入園しない児童は、基本的に「待機児童」としてはカウントされていない。

 そもそも、ソウル市の公立、私立を合計した定員充足率(児童数÷定員)はそれほど低くない。統計や地区によってもばらつきがあるが、100%以上~88%となっていて、保育施設自体が足りていないという訳ではなさそうである。それでは、なぜ韓国の保護者は国公立施設への入園をそれほどまでに強く望むのだろうか。

 やはり、もっとも大きな要因としては金銭的な問題が大きい。韓国・育児政策研究所の資料によれば、国公立の保育園に通わせる親の月平均負担額は2万7257ウォン(約2554円)。一方、私立に通わせる親の月平均負担額は6万2535ウォン(約5860円)となっている。単純計算で約2.3倍の負担差となる。なお幼稚園になると、その負担差は5.5倍以上になるそうだ。

 ふたつめの要因としては、サービスの質が挙げられるだろう。国公立の保育園は私立などに比べ、施設や食事、保育士などの質が高いと言われている。加えて最近、韓国では保育施設における児童虐待のニュースが後を絶たない。16年2月、仁川市の保育園から、4歳児童に頭突きを入れるなどの暴行を加えていた保育士(28歳・女性)の動画が流出している。あまりにも似たような児童虐待事件が相次いでいるため、韓国の保育園90%以上にCCTV(監視カメラ)が設置されるほどだそうだ。そのような背景があり、サービスの質がよいとされる国公立の保育園に応募が殺到することになる。

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