ネルケさんのお子さんは、中学1年の長女、小学6年の長男、こども園に通う4歳の次男の、3人きょうだいだ。雪が深くなる12月末から3月の間は、妻と子どもたちはふもとの借家で別居するが、それ以外はお寺で一緒に暮らす。通学する長女と長男を車でふもとのバス停まで送り、週1回の水泳クラブへも同行する。お寺が休みの日は近隣の遊び場に連れて行く。

 お坊さんでもイライラすることはあるのか。率直な疑問をぶつけると、意外な答えが返ってきた。「イライラもするし、怒ることもある」というのだ。

 例えば、ネルケさんが居間 でパソコンを開いて仕事をしていると、学校やこども園から帰宅した子どもたちがだんだんと集まってくる。わいわいがやがやとして、仕事に集中できない。子どもたちもネルケさんと遊びたがる。

 妻からは「(仕事を)するなら別の部屋でやって」と注文が入る。確かにネルケさんが移動すれば丸く収まるのだが、素直に聞けない。「冬にはこの部屋にしかまきストーブがない。なぜ私が先にここにいたのに、移動しなければいけないのか」。まさに、仕事を持ち帰ったお父さんあるあるだ。

 また別の日には、車でバス停に送って行った長男が、なぜか「バスに乗りたくない」とワガママを言い出した。怒ったネルケさんは長男をお寺に連れ帰ってしまうが、お寺に戻って2、3時間後、学校から長男の在宅を確認する電話があった。探してみると、長男の姿がない!どうやら歩いて山を下り学校を目指していたところを、バスの運転手に発見されたようだ。

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