![魔夜峰央さん1953年、新潟県出身。横浜在住。1973年「デラックスマーガレット」(集英社)でデビュー。1978年、「花とゆめ」(白泉社)にて代表作『パタリロ!』の連載を開始。『パタリロ西遊記!』などのスピンオフ作品を生む大ヒット作となる。1982年、フジテレビ系列で『パタリロ!』がアニメーション化。現在も『パタリロ!』を連載中。また、「まんがライフ」(竹書房)では年に1回、『眠らないイヴ』を掲載している](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/1/2/620mw/img_12f7505758f91cfdb186c0f1fa0076c846579.jpg)
1953年、新潟県出身。横浜在住。1973年「デラックスマーガレット」(集英社)でデビュー。1978年、「花とゆめ」(白泉社)にて代表作『パタリロ!』の連載を開始。『パタリロ西遊記!』などのスピンオフ作品を生む大ヒット作となる。1982年、フジテレビ系列で『パタリロ!』がアニメーション化。現在も『パタリロ!』を連載中。また、「まんがライフ」(竹書房)では年に1回、『眠らないイヴ』を掲載している
![東京では日常的に「埼玉狩り」が行われる(『翔んで埼玉』より)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/b/d/620mw/img_bda27e2fec39c8a9a7f4f89cb5c7ffef104248.jpg)
![麗と百美。恋していても所沢には恐れを抱いてしまう……(『翔んで埼玉』より)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/1/9/620mw/img_19ef4cff0e0a99f5e736001dbf182a4b81945.jpg)
埼玉県民が東京へ行くには、通行手形が必要だ。しかし勝手な行動は許されず、もし高級百貨店にでも足を踏み入れればたちまち埼玉狩りにあい、百たたきの上に埼玉に強制送還される。食堂でも東京都民とはメニューが分かれていて、埼玉県民用のメニューは「残飯定食」「犬のよだれご飯」「雑草まぜご飯」……。
これらは全て、1982年に発表された漫画『翔んで埼玉』で描かれている埼玉いじりの一部だ。こんな話を聞かされたら、さぞや埼玉県民は怒るに違いないと思いきや、実際には大喜びしているのだという。
ツイッターを中心にネットで話題となった同作は、テレビ番組で紹介されたことで一気に火がついた。宝島社が運営する漫画情報サイト「このマンガがすごい!WEB」には復刊を望む声が多数寄せられ、昨年12月に復刻版を発行。初版20万部、4月頭には55万部を超えた。作者は『パタリロ!』で有名な魔夜峰央(まや・みねお)さん。この騒動に「もうあきれていますよ。30年以上前の作品が何でいまさら(笑)」と驚きを隠せないでいる。
『翔んで埼玉』は、成績優秀でスポーツ万能な美少年・麗が東京の学園に転校してきたところから始まるギャグ漫画だ。アメリカ留学帰りの麗は、埼玉県民が東京で虐げられていることに衝撃を受ける。埼玉県出身の生徒は医務室さえ使わせてもらえず、「そこらへんの草でも食わせておけ! 埼玉県民ならそれで治る!」と罵倒される始末。実は所沢出身の麗は、埼玉弾圧に立ち向かうべく革命に身を投じて行くことに……。埼玉差別主義ながら麗に惹(ひ)かれる美少年・百美との道ならぬ恋、ギャグ、ミステリーなど盛りだくさんの内容だ。
出版した当時は、よくも悪くも反響がなかったという。魔夜さんは編集者の勧めで新潟から上京して4年間所沢市に住んでいたが、その後横浜に転居。すっかり『翔んで埼玉』のことは忘れていた。今回改めて作品を見て、「うわっ、よくこんなの描いたな」というのが正直な感想だそうだ。
「埼玉県に住んでいた者として腹が立つくらいの作品ですが、自分が描いたということなので……ああそうですか、すみませんでしたと言うしかないです(笑)」
しかし実際は、埼玉県の書店でも『翔んで埼玉』は大人気。なんと、全売り上げの3割を埼玉県が占めているほど。市長たちからは感謝や激励のコメントが寄せられ、上田清司埼玉県知事も「悪名は無名に勝る」と期待する。