ラグビーW杯での日本代表による歴史的快挙で、注目度が高まっているラグビー。華麗なキックを決める五郎丸歩選手の姿をみて、自分の子どもにもラグビーを、と思った人もいるかもしれない。子どもがラグビー選手を目指すにはどうすればいいのか、今から始めて代表の可能性はあるのか……ラグビーの今を取材した。
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まず、幼少期にラグビーを始めるにあたってもっとも入りやすいのは、地域のスクールに通うことだろう。調べたところ、実は東京都内だけでも20以上ものスクールがあり、そのほとんどが未就学児からの生徒募集をしている。チーム規模はさまざまだが、多いところでは100人近い生徒がいるという。ラグビーの盛んな大阪や福岡には、さらに多くのスクールがある。実はラグビーは、小学生以下には間口の広いスポーツなのだ。
「ラグビー人口のボリュームゾーンは、実は小学生以下の世代にあるんです」と話すのは、日本ラグビー協会・普及競技力向上委員会の川合レオさん。だが一方で、問題になるのが小学校卒業後だ。
「ラグビー部のある中学校はあまり多くないので、中学以降、続けられない子も多いというのが課題です」(川合さん)
つまり、ラグビー選手を目指すには幼少期に始めたラグビーを、いかに中学で続けるかがカギになる。私立中学などにはラグビー部がある場合も多いが、そのために進学先を変えるというのは難しい。それまで通っていたラグビースクールでプレーを続けるという手もあるが、スクールは土日のみの活動がほとんどだ。
だが、そういった問題をカバーする取り組みも行われている。それが「放課後ラグビープログラム」だ。これは大学や社会人チームのグラウンドなどを利用して、平日の週1回、中学生を対象に(地域によっては小学生も可)ラグビー教室を開催するというもの。
この活動は、文部科学省が企画する「2019年ラグビーワールドカップ普及啓発事業」の一環として行われており、日本ラグビー協会が取り仕切っている。同省の肝いりということもあってか、教室の指導陣はかなり豪華だ。元日本代表選手や社会人チームの現役選手など、コーチ陣には錚々たる面々が名を連ねる。全12回の開催で、保険料800円だけで受講できるのも魅力だ。
現在、東京や大阪、福岡などの各地域で開催されている。今回は東京の町田で行われているクラスを取材した。
訪れたのは、多摩市にある社会人チーム・キヤノンイーグルスのグラウンド。人工芝にナイター用の照明と、かなり恵まれた環境だ。夕方になると、小学6年生から中学生までの、総勢30名ほどが集まった。指導するのは、7人制ラグビーチーム「湘南ベルマーレ」GMの小畑江至さんと、元日本代表で、現在はキヤノンイーグルススタッフを務める瓜生靖治さんだ。
ここに集まる大半は、小学校前後からラグビーを始めたが、進学した中学校に部活がないという生徒たち。だが、時には全くの初心者が参加することもあるそうだ。
この日、ここに通う長男の練習を見に来たという女性は、「指導陣が豪華で、練習内容もすごくしっかりしているので、ありがたいですよね」と話す。女性は二児の母で、長男も次男も、週末は都内のラグビースクールに通っている。幼稚園のママ友に誘われたことをきっかけに始めたが、それまでラグビーの知識はまったくなかったという。それが最近では、息子たちと一緒に大学リーグを観戦に行くほどになったそうだ。