国民1人ひとりに12桁の番号を割り振り、行政の手続きを効率化する「マイナンバー(社会保障・税番号)制度」が、2016年1月から始まる。15年10月からは、ナンバーの通知が開始されるが、各種調査によると、必ずしも制度への国民の理解が深まっているとは言えないようだ。
■内容の認知率は約6割
調査会社クロス・マーケティングが15年6月、全国の2000人を対象に行った調査によると、制度について、「他人に説明できるぐらい知っている」「名前も内容も知っている」と答えた人は約6割を占めた。単純比較はできないが、15年1月に内閣府が実施した調査では「内容まで知っていた」と回答した人は3割以下だったことを鑑みると、少しずつ認知度は上がっていとも考えられる。
しかし、制度の認知内容のトップ3は、「マイナンバーは国民一人ひとりが持つ12桁の番号」(92%)、「一度付いた番号は、原則一生涯同じものを利用する」(78.6%)、「マイナンバーは今年の10月以降に住所地の市区町村から通知される」(69.6%)と基本的なことばかり。実際の運用にかかわってくる「勤務先に提示し、源泉徴収票に記載する」(26.5%)、「児童手当の現況届の際に提示」(12.4%)などについては、まだまだ認知度が低いと言えそうだ。
同社の調査担当者も「基本的な内容は知っていても、制度が施行されることで生活にどう関わってくるのかといったことまでは国民の理解が行き届いていないのでは」と分析する。
■制度の内容とスケジュール
そもそも、どういった制度なのだろうか。マイナンバーは、外国人を含む、日本に住民票がある人に発行される。国や自治体などは、雇用保険や医療保険、確定申告といった行政手続きの際に共通の番号を使うことで、情報の照合などにかかる時間や労力を削減し、手続きを簡素化できるという。
行政機関にとっては、個人の所得や行政サービスの利用状況を把握しやすくなるため、生活保護や年金の不正受給などを防ぎ、本当に必要とする人に支援をする、という狙いもある。私たちにとっても、行政サービスを受ける手続きをする際に提出する書類が減る、といったメリットがある。
具体的なスケジュールは、上記にもあるが、15年10月以降、住民票の住所に、簡易書留でマイナンバーが記された「通知カード」が届く。実際に番号の利用が始まるのは、16年1月からだ。任意の申請者への「個人番号カード」の交付も開始される。
氏名や住所、マイナンバー、顔写真などが記載された「個人番号カード」は、身分証明書として使える。ICチップが搭載されており、17年1月から運用予定のマイナンバーに関する情報が閲覧できる個人ごとのポータルサイト「マイナポータル」に接続する際などに必要となる。