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最後から二番目の恋 DVD-BOX
出演:小泉今日子、中井貴一
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 どうすれば小泉今日子のように、齢とともに魅力を増していけるのか―― その秘密を知ることは、現代を生きる私たちにとって大きな意味があるはず。

 日本文学研究者である助川幸逸郎氏が、現代社会における“小泉今日子”の存在を分析し、今の時代を生きる我々がいかにして“小泉今日子”的に生きるべきかを考察する。

*  *  *

 2000年代の小泉今日子は、どちらかといえば「渋い」存在でした。

「InRed」のような「青文字系雑誌」のアイコンをつとめたり、相米慎二や黒沢清といった、海外で評価されている監督の映画に出たり――仕事の格式は高いのですが、派手に目立っている感じはしませんでした。

 そうした状況は、2010年代になると大きく変わります。『最後から二番目の恋』シリーズや『あまちゃん』などの人気作に登場。何かにつけて話題になる機会が増えています。

 2010年代に「再浮上」した小泉今日子。その背景に何があったのでしょうか。

 20世紀の後半、欧米を始めとした先進各国では「消費文化」が花開いていました。「その人が何者なのか」は「何をどのように消費しているか」が語る。そういう価値観が世の中を支配していたのです(詳しくは、J・ボードリヤール『消費社会の神話と構造』 紀伊國屋書店 1995年 などを参照)。

 日本では1980年代に始まったバブル景気にあおられて、「消費文化」が広まりました。老いも若きも、お金を使うことに夢中になったのです。けれども、当時の日本の「消費文化」は、現在から振り返ると文化的に未熟なものでした。シャンパンならドン・ペリニヨンかモエ・エ・シャンドン。男もののスーツならアルマーニ。バブル時代には、「これさえ消費していれば称賛される」という「必殺アイテム」が一つか二つあるだけで、消費の選択肢はかぎられていました。

 このころのファッション雑誌を見ると、有名カメラマンの写真が高価な紙に印刷されて載っています。ただし、そこに登場するモデルが身に着けているのは、アルマーニやプラダといった「誰もが知ってるブランド」の服ばかりです。バブル当時、日本で買える輸入ブランド品のバラエティはまだ乏しかったことがわかります。

 私の知り合いに、バブルの時代に大学生活を送った女性がいます。彼女はクリスマス前に、三人の男性からデートに誘われました。三人はそろって、別れぎわに駅のロッカーの鍵を渡し、「中にプレゼントが入っているから開けてみて」と言ったそうです。ロッカーにしまわれていたのは、三度ともまったく同じティファニーのペンダントでした。雑誌に書かれていた「こうすれば女の子は喜ぶ」という記事を、三人が三人、そのまま実行したのです。

 ティファニーを三回贈られたその女性は、男性からかなりちやほやされていました。その彼女にしてこういう「滑稽なあつかい」を受けてしまうほど、バブル時代の「消費文化」は貧弱だったのです。こうした「貧しさ」は、1990年代後半には消えていきます。

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