聞けば、地方大会でも、気になる試合はチェックしているという。「大阪大会は初戦から履正社と大阪桐蔭が戦うでしょう。見に行きたいのですがなかなか時間が取れなくて……」と悔しそうだ。

 なぜそこまで高校野球にこだわるのか。「高校野球の試合は、独特の一発勝負。勝負の怖さというか、思わぬ逆転劇やドラマがある。選手たちの最後まであきらめない姿勢にも感動する」と話す。選手と同じ目線で試合が見られるバックネット裏は、「球場全体が見渡せ、映画のスクリーンのような迫力がある」という。

 そしてなぜ、いつもラガーシャツに蛍光イエローのキャップ姿なのか。これには「常にテレビに映るのなら、目立つ色がいいだろう」という思いがあるそうだ。10年ほど前から始め、現在は大会前に約30着を用意。1試合が終わるごとに着替えている。

 春夏の甲子園に合わせて登場する8号門クラブは、高校野球ファンや関係者の間で認知度が高まっており、門の前で待機するメンバーに差し入れをする地元住民もいるという。ラガーさんも、ファンから記念撮影を頼まれたり、ラガーシャツをプレゼントされたりする。そんな名物的な扱いに「ゆるキャラみたいなものですね。楽しんでもらえるのならいいです」と喜ぶ。

 今年も8月3日の抽選会ごろから現地入りする予定だ。年を取り、8号門前で野宿を続けるのは体がつらくなってきたが、高校野球への愛情にかけて、やめるわけにはいかない。「甲子園あってのラガーさんというか、高校野球は生きがい。第100回といわず、120回大会ぐらいまでは(この観戦スタイルを)続けたいね」

 8号門クラブ、そしてラガーさんの挑戦は、どこまで続くのか。

(ライター・南文枝)