「単なるメンタルチェックにとどまらず、その結果をどのようにして職場環境の改善につなげるのかが重要」と話す渡辺さん(大阪市内で行われた研修会で)
「単なるメンタルチェックにとどまらず、その結果をどのようにして職場環境の改善につなげるのかが重要」と話す渡辺さん(大阪市内で行われた研修会で)
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「ストレスチェック」を受けても良い理由はさまざまだった(インターワイヤード提供)
「ストレスチェック」を受けても良い理由はさまざまだった(インターワイヤード提供)

 働く人たちの心理的な負担の程度を確かめるストレスチェック制度が、従業員50人以上の事業所を対象に、2015年12月から義務づけられる。うつ病などメンタルヘルス不調の予防や職場の環境改善が目的だというが、チェックを受ける従業員側からは、情報漏れや結果による会社側の対応などを不安視する声が上がっている。

 この制度は、(1)心身の状態や仕事の状況、人間関係などを問う調査票によるストレスチェック検査(2)その結果を受けての医師による面接指導<希望者のみ>(3)面接結果を受けた事業所側の対応までを含めたものだ。厚生労働省は、施行後1年以内にチェックを行う必要があるとしている。

 市場調査会社のインターワイヤードが15年3月下旬、会社員や公務員など975人を対象に行った調査によると、「ストレスチェック」という名称を知っている人は49.6%と半数以下で、義務化について知っている人は16.9%と、認知度の低さが明らかになった。

 従業員にチェックを受ける義務はないが、半数以上の63.2%が検査を受けてもよいと回答。理由としては、「自分のストレス具合を測ってみたい」が7割弱と最多で、「職場環境を会社に把握してもらいたい」(24.3%)、「ストレスを抱えていることを会社に知ってほしい」(22.5%)と続いた。

 一方で、検査を避けたい・受けたくない、と回答した人からは、「会社に情報が漏れる恐れがある」(20.9%)、「リストラや減給・降格・異動などの口実にされそう」(14.5%)といった理由が上がり、情報漏えいや結果が悪かった時の処遇を不安視する人が多かった。

 この制度の厚労省の検討会の委員も務めた、日本精神科産業医協会の共同代表理事、渡辺洋一郎氏は、「ストレスチェックとは、症状がある“人”をチェックするのではなく、ストレスの“原因”を調べる制度。安易な取り入れは従業員の不信感や労使トラブル、組織の混乱、無意味な支出を招くだけ」と警告する。

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