ON、オリックス時代のイチロー、落合博満ら日本の選手はもちろん、ベーブ・ルース、ルー・ゲーリック、タイ・カップなど米・大リーグ名選手のバットもある。一部のバットは手にしたり、スイングしたりすることができる。NPBの選手は12球団ごとに並び、現監督のものは一か所に集めてある。
長嶋茂雄、金本知憲のバットには、「この辺 肉を付けて」、斜線を引いて「削る」などと書かれている。本人か、注文を受けた職人が書いたものかはわからないが、バットをオーダーする際に残したメッセージである。
「世界の王」のバットを見に、台湾から多くのファンが足を運ぶとか。王貞治のバットは、無駄や隙を感じさせないオーソドックスな形である。バットを前にすると、その選手のプレースタイルや野球観、性格までが見えてくるから面白い。
最後は北陸のコアな野球ファンと語らい、おなかいっぱいになっていただきたい。富山市にあるそば屋「東京亭呉羽店」、ミスターの大きな看板が目印だ。中に入るとONの写真やサインはもちろん、野村克也、V9時代の巨人軍の選手、そして今を時めく広島の黒田博樹……。店内は幾多の野球人のサインや記念品であふれている。
店主の西田進さんも元高校球児だった。知人友人、野球関係者などの人脈を駆使してサインを入手した話、選手が北陸に遠征した時、どこに立ち寄るかなどの情報は尽きない。
そば屋ながらラーメンが売りである。四半世紀前、「江川定食」などを考案し、最も人気の高かったラーメンは「長嶋ラーメン」とした。しかし、常連客から「長嶋さんを食べるわけにはいかない」と言われ、元に戻したとか。北陸の野球愛、感じていただけるだろう。
(ライター・若林朋子)