集団的自衛権――。日本と親しい関係にある国が直接武力攻撃を受けた際、日本も協力してその国の防衛に当たることだ。これが認められると日本の自衛隊も他国の戦闘に参加する可能性が出てくる。
戦後から今日まで長く国民から評価されなかった時代が続いた防衛省・自衛隊にとって、集団的自衛権行使のための安全保障関連法案の今国会での成立はいわば悲願だ。いつの時代でも中央官庁は自らの権限拡大を望む。防衛省・自衛隊とて例外ではない。
だが意外にも現場の自衛官たちはこうした動きを歓迎しているわけではないようだ。
「外の人は自衛隊という世界をわかってない」
中学校卒業後、自衛隊の技術部門のエキスパートを養成する海上自衛隊第1術科学校生徒部で学び19歳で3等海曹に任命された現在40代のエリート下士官は、安保関連法案に揺れる昨今の世相をこう語る。
現在1曹の彼の同期で出世頭は防衛大で学んだ2佐、そしていちばんのしんがりは2曹だ。同期で2佐と2曹、旧軍でいえば中佐と軍曹と大きく階級差が開いている。
だが1曹の彼は、「出世頭は確かに防大出だ。でも“勝ち組”は2曹。それももう20年近く艦にも乗っていないヤツ」と知られざる自衛隊員の意識を明かす。