「アベノミクスの第一の矢である『異次元の量的緩和政策』とは『ハイパーインフレによる財政再建政策』です。今、株価は上がり、ベアもあり、景気は上向いています。お金をジャブジャブにするのですから、予想通りの結果です。しかし、出口でつまずきハイパーインフレにでもなれば、それまでのプラスはすべて相殺されるどころか大マイナスです」
こう語るのは、維新の党で参議院議員として活動する藤巻健史氏。かつてモルガン銀行東京支店長を務め、「伝説のトレーダー」として世界でも評価されている人物だ。英BBC、ブルームバーグなど海外メディアでの発言も多い。
3月26日に上梓する『吹けば飛ぶよな日本経済 破綻後の新しい国をつくる』(朝日新聞出版)で衝撃的な日本の未来像を予測している。目下の好景気に沸く日本のごく近い未来に、国債・円暴落とハイパーインフレによる悲惨な国民生活が待っているという。
その理由のひとつは、日本が抱える膨大な借入金。2014年末の時点で1030兆円に達し、年10兆円を返済したとしても100年以上かかる計算で、14年度予算でも96兆円の歳入のうち41兆円を国債に頼っている。これまで国債を保有してきた民間金融機関は急速に国債を手放しており、現在では国債の買い手は実質的に日銀以外にない状況だ。財政はすでに破綻しているが、安倍=黒田コンビによる日銀の異次元緩和が、延命治療のように最終局面を先延ばししているに過ぎない。日銀が国債買い入れをやめれば、その瞬間に国債と円の信用は毀損し、大暴落。1ドル千円になる可能性もあるという。あらゆる物価は高騰し、格安になった国産品は外国に買い占められ、原材料や食料などの輸入価格高騰とあいまって、国民を大混乱に陥れるハイパーインフレまで待ったなしだ。
「平成27年度の国の国債発行予定額は新規国債37兆円、借換債116兆円ですが、日銀が年間110.1兆円、すなわち70%を買うことになっています。量的緩和が理由です。7割を買い占めている買い手がいなくなれば、国債による資金調達ができず、国の財布の半分は空っぽになります。国家機能が停止し、国債市場は大暴落、長期金利は急騰です。かといって、国の資金繰り倒産はまずいと日銀に強制的に国債を買わせ、量的緩和を継続させれば、バブルはさらにふくらみ、ハイパーインフレの衝撃はより大きくなります。国家的リスクをおかしているにもかかわらず、量的緩和の出口について明言しない政府と日銀は無責任です」(藤巻氏)
一方で、その先にあるのは、決して絶望だけではないとも言う。当初の混乱をすぎれば、大幅円安によって経済が復活し、「真の資本主義国家」として再び日本はかつての栄光を取り戻せるというのだ。その混乱期をどのように乗りきるのかについても具体的な処方箋が語られている。国のあり方としては税制や年金の根本的改革、為替庁の設立、セーフティネット整備を前提とした自由競争の徹底などを提案。資産を守る方法としては、日本の銀行でも買える米ドル建て金融商品や、国債暴落のリスクをヘッジする債券ベアファンドへの投資などだ。
藤巻氏が繰り返し鳴らし続けるハイパーインフレと〝経済敗戦〟への警鐘。今の日本でで、こういった非常事態への備えや、復活のための処方箋は、あっても無駄にはならないだろう。
【関連書籍】
『吹けば飛ぶよな日本経済 破綻後の新しい国をつくる』
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=16904