「日本の政治、選挙は政策とは違うところで動いているんですね」

 鈴木貴子氏は親子の情を前面に出し、石原氏は男の美学。日本の選挙は情に訴えるのが有利ということか。

 池上氏の選挙特番といえば、バスツアーで関係先をまわる恒例のコーナーがある。選挙活動中の自民党小泉進次郎氏をコンビニで発見し直撃。まるで週刊誌取材の現場のようである。単独インタビューには応じないことで有名な小泉氏だが、店内で交渉するとOK。将来の総理候補と水を向けると、

「狙ってなれるものではないので……」

 という小泉氏だが、池上氏は「ということは、なれるものならなりたいと受け取りました」と突っ込んだ解釈をした。

 圧巻は安倍晋三首相が登場したとき。舌鋒鋭く、こう本心を引き出していった。

――街でも「今回なんで選挙するのか分からない。関心がない」という声が多かった。低い投票率での勝利は、あまり自慢できないのでは。
「しっかりと信頼を獲得するように努力したい」

――今回の選挙で、集団的自衛権の解釈についてあまりおっしゃっていなかったが。
「そんなことありませんよ。これまでテレビの討論会で何回も議論した」

――これだけの議席を確保すると、安倍総理の悲願である憲法改正が視野に入ってくると思うが、ご本人の手で成し遂げたい?
「国民的なご理解が必要です。国民投票で過半数の支持を得なければいけません。理解を深めるところから進めていきたい」

――憲法改正に向けて一歩一歩進んでいく、ということですね。
「そういうことですね」

 中継後、池上氏は安倍首相の話を次のようにまとめた。
「憲法改正の熱意、野望をまったく隠そうとされなかった」

 その後も、落選が決まった民主党の海江田万里代表に「代表でいられるのか」と迫り、同じく民主党の細野豪志氏にも「自民党に替わる政党がない。民主党の責任は大きいですよね」と、手を抜くことはなかった。

 今回の投票率は、前回の総選挙より7ポイント下がって52%あまりとなる見込みだ。衆院選としては戦後最低の数字だが、池上氏の突っ込みにもやや鋭さがなかったように感じられた。中継数が多く、収録済みの企画モノも盛り沢山で、各々の政治家と十分な対話ができなかったのが原因か。やや策に溺れてしまった感の否めない選挙特番だった。(ジャーナリスト・青柳雄介)

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