AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
【「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」の写真はこちら】
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学生運動のクライマックスともいえる東大安田講堂のバリケード封鎖解除から約4カ月後。1969年5月13日に東大全共闘の学生が作家の三島由紀夫を招いて東大駒場キャンパスで討論会を開いた。
片やノーベル文学賞候補にも名があがる世界的文学者であり民兵組織「楯の会」を率いる右派、片や「大学解体」「自己否定」を旗印にゲバ棒を掲げ機動隊と衝突し国家権力と闘う左派だ。
日本の戦後史におけるもっとも緊迫した時期に、暴力ではなく言葉で左右が対峙した伝説的な討論会を撮影したニュース映像の原盤が、TBSの倉庫から見つかったのが2019年3月のこと。16ミリフィルムの原盤2巻、計1時間15分20秒にも及ぶものだった。この貴重な資料映像を映画の形にして世に問おうと考えたTBSのプロデューサーから豊島圭介監督(48)に声がかかった。
それまでこういったテーマの作品を手掛けたことはなかった監督。手ごわい取材相手のことを考えると恐怖に震えたこともあったが、膨大な予習を積み、綿密な作戦を練った。
「まずこの討論がどう位置づけられるのかということを、現在の視点から69年を顧みるパースペクティブを持っている識者の方々に解説していただき、そのうえで実際に討論に参加した方や当事者の方々に具体的な話を聞いていこうという作戦でした」
東大全共闘の芥正彦や木村修、楯の会の篠原裕、宮澤章友、原昭弘といった当事者の証言が刺激的だ。当時の時代背景を解説するパートもありながら、映画は討論内容を、時には解説字幕付きでしっかりと見せていく。まるであの日の900番教室に自分がいるかのようだ。
「この討論会で何を議論しているのかをはっきりさせようと思いました。そして、三島に実際に会ってしまった人がいかに三島に魅入られ、その後の人生を規定されてしまったかを描くものとなったと思います」
特に、三島に直接連絡をとり、当日学生服姿で司会を務めた木村修さんのエピソードは衝撃的だ。