データサイエンティストを養成するデータミックスの講座は主に文系ビジネスパーソン向け(撮影/岡田晃奈)
データサイエンティストを養成するデータミックスの講座は主に文系ビジネスパーソン向け(撮影/岡田晃奈)
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ビジネスの下地があってこそ、数学やデータの知識、スキルをビジネス課題の解決に生かせるという(撮影/岡田晃奈)
ビジネスの下地があってこそ、数学やデータの知識、スキルをビジネス課題の解決に生かせるという(撮影/岡田晃奈)

 仕事も生活も、あらゆることがデジタル化され、データサイエンスやAIなしに成り立たなくなった現在、その基礎となる数学を理解する必要性が増している。数学嫌いの「文系」人間であればなおさら、数学を学ぶことで新たな可能性を手にする感動は大きいはずだ。「数学必須の時代」を特集したAERA2020年3月23日号の記事を紹介する。

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 数字やデータに関するリテラシーは、一部の専門職にのみ必要とされるわけではない。転職や採用支援を行うオプティマスの広富さつき社長はこう語る。

「あらゆるデータがあふれている現在、どんな仕事であってもデータを読み解いて意思決定する力が求められます。転職市場においても、企業側からは職種を問わずに数学的素養のある人材を要望されます」

 営業職ではクライアントに対して提案の根拠を数字やロジックで示す必要がある。求める売り上げ目標から逆算し、行動の量と質を算出する数学的な逆算思考も必須だ。マーケティングやコンサルティング部門なら、データや事例に基づいた確度の高い施策を提案する能力が求められる。経営企画部門や人事部門でも、会社の目指す姿と現状の組織を俯瞰し、課題を把握する力が要求される。

 少し前の調査ではあるが、文系学部出身者であっても、数学ができる人ほど年収が高いというデータがある。

 神戸大学経済経営研究所の西村和雄特命教授らが12年に発表した調査では、私立大学の文系学部出身者で大学受験を一度でも数学で受けたことのある3977人の平均所得は532.2万円で、数学受験をしなかった人(443.1万円)と比べて約90万円高いという結果が出た。

 数学受験をした人のほうが大企業に勤めている割合や正社員率が高く、役職に就いている人の割合は数学未受験者より10%ほど高かった。西村教授は言う。

「数学学習によって養われる論理的思考が、数学受験者の所得を高くしていると考えられます。確実に言えるのは、数学ができれば、就職や転職の際により広い範囲から職業を選択できるということです」

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