作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は女性の声が反映されない日本について。
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会社のスタッフから微熱があり咳(せき)が止まらないと、電話があった。保健所に電話してみたが、案の定、高熱になったら電話してとのこと。冷たいし、怖いし、どうしたらいいかわからないから取りあえず家にいますが……「いつまで?」という黒い不安に互いにとりつかれる。
オリンピックどうするか問題に追われ、命を真剣に考えていなかったつけは、これから大きく私たちにのしかかってくるのかもしれない。
もっと早く対応してほしかった。韓国のように十分に検査機関を設置して、不安を取りのぞくために最大限動く政府がよかった。台湾のようにマスクや消毒液の補充を政府が率先して行うような国がよかった。
こうなったら、せめて経済不安をやわらげてほしいと強く願うが、今、自民党内で語られているのは「お肉券」……。低迷する和牛消費を盛り上げるために、和牛が買える商品券を配る案らしいが、韓国や台湾と比べると、同じ時代、同じアジアにいるとは思えない時空を超えた奇策ぶりに圧倒される。長年この国に住み、十分にわかってるつもりなのに、いまだに虚を突かれてしまうジャパンの奇想天外ぶり。
いったいこういう日本の「おかしさ」は、どこから来るのか。なぜこんなに人に冷たく、命に鈍いのか。と考えるに、フェミニストとしてはやはり、「おっさんばかりだからでしょ」と言うしかない。重大な決定を下す場に、見事におっさんしかいない。医療、経済、政治、法曹、メディア……あらゆる分野でトップはおっさんに占められ、おっさんの論理が優先され、おっさんマインドが社会の隅々に行き渡っているのだ。
日本で会社経営していると、そういうおっさんの壁に何度もぶちあたる。例えば関税問題だ。私の会社は海外から様々な商品を輸入している。セックストイだけでなく、デリケートゾーンケアの化粧品や、生理用品、下着などだ。関税は一般消費者には見えないものだが、確実に商品の値段に反映される。そしてその関税率の根拠が、とてもおっさん的だ。