野田佳彦首相(55)と小沢一郎・民主党元代表(70)のトップ会談で永田町は色めきたっている。だが、その実態は、単に席を同じくしたという「アリバイ作り」になる公算大だ。苦しいのは無罪判決ながら控訴された小沢氏側。党代表選で一発逆転を狙うしかないのだが―。

 22日に輿石東幹事長(76)と会い、野田首相との3者会談受け入れで注目を集める小沢氏。まさかの控訴で劣勢に立たされた氏にとって、9月の党代表選で勝利しないと次への展望は開けない。自身の出馬が困難な以上、代わりの有力候補を擁立することが不可欠だ。

 一部の小沢グループ議員の間で急浮上したのが、長妻昭元厚生労働相(51)だ。言わずと知れた「ミスター年金」。2007年の参院選では「消えた年金はあるんです」というフレーズで政権交代の足がかりをつくった立役者である。

「長妻さんには全国的な知名度に加え、クリーンなイメージがある。代表選に出れば、コアな民主党ファンである党員票も確実に見込める。党内基盤はなくても、我々がもり立てればいい」(小沢氏率いるグループ「新しい政策研究会」の中堅議員)

 対する長妻氏の側にも、現状への不満がないわけではなさそうだ。

「『自分が党の社会保障政策を引っ張ってきた』という自負がある長妻さんは、政府が自民党の主張にすり寄ることに、忸怩(じくじ)たる思いがあるのではないか。純粋な人なので、小沢さんに利用されないか心配だ」(親しい議員)

 野田政権と自民党が手を握り、凪(なぎ)状態が続いている国会審議。長妻氏が政権批判を始めれば、政局は一気に流動化する。

※週刊朝日 2012年6月8日号

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