AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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自身の祖母にまつわる体験をあたたかくユーモラスなドラマに紡ぎ上げたルル・ワン(37)。わずか4館での上映から全米トップ10入りする大ヒットとなった。
はじまりは7年前。中国に住むワンの祖母が、がんで余命3カ月と診断された。だがワンの家族はそれを祖母に隠し通すことを決める。そして親族の結婚式の名目で親戚一同を集め、祖母を囲んで最期を過ごす計画を立てたのだ。
「目の前で起きていることこそが、自分が一番映画にしたい物語だと気づいたんです。本当は悲しいのにそれをみせず、みんなで嘘をついたり、なにかの『ふり』をする。そのシチュエーションは非常にコミカルで滑稽で、かつ人生の哀愁に溢れていました」
オークワフィナ演じるヒロイン・ビリーには監督自身が重ねられている。6歳でアメリカに移住したビリーは、祖母への「嘘」に素直に同意できない。アメリカでは本人への告知が一般的だからだ。
果たしてビリーは祖母に嘘をつき通すことができるのか? ハラハラの展開に、異なる文化や背景のなかで暮らす家族のかたちが映る。
「グローバル化が進み、これからはよりいっそう家族が世界中に散らばり、その国や地域の影響を受けるようになる。なのに現代社会ではさまざまな物事が二極化し、善か悪か、白か黒かをはっきりつけたがる傾向にあります。家族や友人の関係や愛が、そんな二極化の風潮によって潰されてしまう気がするんです」
どちらがいいか悪いか、白か黒かでは測れないものの大切さが映画からあふれ出す。
「自分と違っていてもお互いをリスペクトし合う。その行為の優美さや品格、なにより愛の大切さを受け取ってもらえればと思います。大切な人と過ごせる時間は本当に短いですから」
実話だけに最後にはあるサプライズも待ち受けている。