

又吉直樹さん原作の映画「劇場」。主人公である売れない劇作家の青年、永田を演じるのは俳優の山崎賢人さん。自分の体験を主人公に重ねながら物語を書いたという又吉さんと主演の山崎さんが、作品を通し自らの活動を振り返った。AERA 2020年4月13日号掲載の記事を紹介する。
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永田の心をかき乱すのは、同世代の劇作家・小峰の存在だ。才能を評価され、世に出ていく小峰に永田は嫉妬と焦燥を抱く。
又吉直樹(以下、又吉):僕もね、20歳のころは1、2年上の先輩がテレビで活躍しているのを見て、不安や焦燥を感じることがあったんです。けど4、5年たってくると、あまりにもそういう感覚をくらいすぎて、逆に痛みを感じなくなってくる。それが本当は一番まずいんだけど。
山崎賢人(以下、山崎):わかります。
又吉:活躍している芸人を自分の日常から消したくて、テレビを見られなくなった。彼女とテレビを見ていてお笑い番組が始まると、彼女がそっとチャンネルを変えてくれてたんですよ。そのうち、ほかのジャンルの人の才能に気持ちを向けていくんです。音楽好きだから、くるりやナンバーガール、エレカシ……。でも彼らは年上で「まだ6年あるからいっか」とか。その差異に救いを求めてた。
山崎:僕、日本映画を全然見ないときがありました。同年代の俳優が出ている作品をあまり見たくなかった。たぶんいろんな人を意識していたんです。
又吉:特に意識する人がいた?
山崎:あえていうと菅田(将暉)くんですかね。一回、軽くケンカになったこともあって(笑)。
又吉:へえ!
山崎:お互いにちょっと嫉妬し合った時期もあったし、周りからすごく比較されたんです。そうすると自分も意識しちゃって、自分が弱く見えたりもして。いまは「自分は自分かな」と思えるようになったし、みんなでいい作品を作っていこう、という気持ちになれましたけど。
表現者として成功を収めた二人にとって、「才能」とはなんだろう?