検察の人事異動では指導力を発揮した森雅子法相(C)朝日新聞社
検察の人事異動では指導力を発揮した森雅子法相(C)
朝日新聞社
稲田伸夫検事総長(左)と森雅子法相(C)朝日新聞社
稲田伸夫検事総長(左)と森雅子法相(C)朝日新聞社

 森雅子法相ら政治家と検察幹部の暗闘「第二幕」が始まったようだ。

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 法務省は4月10日付で発令する予定だった人事異動を凍結したと発表した。理由は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言だという。

 春の異動では713人の検事が異動予定だった。他の省庁などに異動する56人だけは予定通り異動。だが、予定されていた350人の副検事の異動も凍結された。検察幹部の一人は打ち明ける。

「この原因は検察幹部と森法相の関係がぎくしゃくしているからじゃないかと思いますね」

 昨年12月、日産自動車のカルロスゴーン被告の海外逃亡、東京高検の黒川弘務検事長の定年延長など、法務省は問題が山積していた。国会で森法相は、何度も答弁を変えるなど、大臣としての資質を問われていた。

 そして3月には国会で森法相が「(東日本大震災の時に)検察官が容疑者を釈放して逃げた」と事実ではない答弁をしたことで、菅義偉官房長官から厳重注意を受けていた。

「森法相とすれば、事務方の検事がしっかりすれば、国会答弁で苦しむこともなかったと、かなり不満に思っていたそうです。検察幹部は緊急事態宣言の意味合いを十分、把握していなかったのか、森法相に根回しせずに進めていたが、土壇場になって了解を求めたところ、緊急事態宣言が出ているのに、引っ越しは新型コロナウイルスの感染につながりかねないと指摘され、急遽、凍結となったのです」(前出・検察幹部)

 困ったのは、異動の対象となっていた検事や副検事だ。関東地方の検察庁に勤務する、検事の一人はこうぼやく。

「もう引っ越しの荷物は出しました。家には数枚の布団とかタオル、鍋1つしかありません。凍結と聞いて大急ぎで引っ越し業者に連絡し、荷物を戻してくれと頼みました。しかし、長距離の引っ越しだったので、今の官舎から荷物は離れた場所にあり、『戻すのは時間がかかります。新型コロナウイルスの関係もあってスタッフも少ないので』と言われて、困っている。本当なら12日の週末に引っ越しは完了する予定だったのに……」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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森法相に一喝された稲田検事総長