この記事の写真をすべて見る
鏡で歯を見ると歯ぐきが以前に比べ、減ってきたように見える。歯の根(歯根)が出てきている部分もあるような気が……こうした変化は加齢のせい? 特に症状がなければ気にする必要はないのでしょうか?『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
* * *
歯ぐきが下がって歯の根が見えるようになっていたら、大いに気にしなくてはいけません。加齢の影響も一部ありますが、多くの場合、それは進行した歯周病の影響と考えて間違いないからです。「歯が長くなってきたように見える(歯ぐきが下がったため)」場合も同様に進行した歯周病の可能性があります。
なぜ歯周病になると歯ぐきが下がるのでしょうか?
歯周病が起こると歯ぐきで歯周病菌が繁殖、活動が活発になると歯ぐきが赤く腫れてきます。ただし、このときは歯ぐきはむしろ盛り上がっています。歯ぐきが下がって見えるのは腫れが治まってからです。
歯ぐきの炎症は歯周病菌を攻撃するために起こるからだの防御反応です。このため、からだと歯周病菌との闘いが終わると、腫れはいったん治まります。しかし、この闘いでは歯ぐきの組織に大きなダメージが残ります。
「歯肉溝上皮」という、歯ぐきの中でも特に重要で、歯に付着し支えている組織が破壊されてしまうのです。そしてこの破壊のために歯ぐきは歯面からはがれ、徐々に歯の根のほうに下がっていき、その位置にとどまります(ちなみにこのとき、歯周ポケットもできてしまいます。歯肉溝上皮がはがれることで歯と歯ぐきの間にすき間ができてしまうためです)。
歯周病で歯ぐきが腫れるたびに同じことが起き、歯ぐきは少しずつ下がっていきます。
なお、歯周病の初期の段階(歯肉炎)であれば、プラークや歯石をきれいに取り除けば下がった歯ぐきの位置は元に戻りますが、そこから先に進行した場合、歯ぐきの位置を完全に元の状態に戻すことはできません。