俳優・モデルとして活躍する小松菜奈さんがAERAに登場。どこかミステリアスでありながら、圧倒的な存在感を放つ小松さんに、演技に対する思いや姿勢について話を聞いた。AERA 2020年4月20日号掲載の記事を紹介する。
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スクリーンに小松菜奈が映し出されると、目が離せなくなる。圧倒的な存在感と、深い哀しみも孤独の奥にある優しさも伝える豊かな表現力を併せ持つ。
俳優として本格的に映画デビューしてから約6年。男子生徒が憧れる学校一のマドンナ、地方都市に生きるキャバクラ嬢、つらい過去を背負う女性など、多様な役を演じてきた。最新映画「糸」で演じたのは、困難を乗り越え自ら人生を切り拓くヒロイン、葵だ。
「葵は複雑な過去を持っていますが、中身は目標に向かいまっすぐ進んでいく女性。これまでは癖のある役を演じることが多かったので、“普通の女の子”である葵を演じることに、最初は難しさを感じていました。『今の演技では足りないんじゃないか』と思い、何か付け加えたくなってしまうんです。でも、頭で考えることをやめ、目の前で起こること一つ一つに向き合い、その場の空気や気持ちを感じながら演じました」
出演作の多くは映画だが、自身もまた、映画好きだ。いつか一緒に仕事がしたい監督の作品、刺激をくれる俳優が出演する作品が公開されると、映画館に足を運ぶ。気になる作品のDVDを購入し、自宅でメイキング映像を見ることもある。
「『こんなふうに撮っていたんだ』と発見したり、『人によって役づくりって全然違うんだな』と感じたり。最近は、照明がどのように使われているのかが気になっています。映画っていいな、と。一人の映画好きとして楽しんでいます」
出演してみたい作品、一緒に仕事をしてみたい人がたくさんいる。
「あの監督は現場ですごく厳しい、と聞くと興味がわいて、私も撮影に参加してみたい、と思うんです」
映画で見せるミステリアスな雰囲気とは違う、気さくで柔らかな笑顔。多くの監督に愛される理由が、わかる気がした。(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2020年4月20日号