リーマンショックに欧州危機と、海外の景気動向に振り回されっぱなしの日本企業だが、まだ底力は残っているようだ。2012年度、業績の「V字回復」を見込んでいる。

 多くの企業は決算発表の際に、その次の期の売上高や経常利益(日常的な活動による儲け)といった自社の業績予想も公表する。この予想値をまとめたSMBC日興証券によれば、東証1部上場企業は、今年度の経常利益について、前年度と比べて11.7%増と大幅に改善する予想を発表している。

 それなのに、企業の「通信簿」である株価は一向に上がらない。会社側が、業績がこれだけ回復すると予想しているのに、株式市場はそっぽを向いたままなのだ。

「確かに、多くの企業は今期は大幅な利益増を予想しています。しかし、狙いどおりになるのか、病み上がりだけに、確信を持てないのです」(金融市場関係者)

 確信を持てない理由はもうひとつあるようだ。大幅な利益増とはいえ、それは、ギリシャを中心に世界経済の先行きが見えにくいなかで予想された自社の未来の業績だからだ。出題範囲があいまいなテストで子どもが「80点以上とる」と宣言して、すべてそのとおりになるものだろうか。

 会社も同じだ。大風呂敷を広げるだけ広げて、その後に下方修正する「ハッタリ」会社もある。会社側の業績予想には、業界や個別企業に特有の「クセ」があることはあまり知られていない。

「ある会社について、『予想』と『結果』の長期にわたる傾向を見れば、クセや業界動向も浮かび上がってくるでしょう。投資だけでなく、業界分析に役立つのではないでしょうか」(金融情報会社スリーアイの竹田嘉文マネージャー)

 こうしたクセを知ることは、学生なら就職活動、会社員なら転職の参考になるし、さらにいま勤めている会社や取引先、ひいては日本企業全体の状況を把握する一助にもなろう。

※週刊朝日 2012年6月1日号