4月9日に行われた9都県市の首長によるテレビ会議の様子(撮影/大平要)
4月9日に行われた9都県市の首長によるテレビ会議の様子(撮影/大平要)
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 政府による新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言を受け、強大な権限をふるうのは対象地域の知事たちだ。しかし、テレビ会議での姿には「本当に任せていいの?」と、不安すら漂う。

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「首脳のみなさん、おそろいですか」。座長を務める川崎市の福田紀彦市長が呼びかける。4月9日午後7時半すぎ、安倍晋三首相の緊急事態宣言から丸2日後。定刻から遅れて東京都の小池百合子知事が画面に映ると、会議は始まった。

 当初、宣言対象となった9都県市の首長によるテレビ会議。9分割された画面には東京、神奈川、埼玉、千葉の各知事と、指定市のさいたま、千葉、横浜、川崎、相模原の各市長。

 状況報告が順番に続くが報道陣は拍子抜けした。「(県民に)換気の励行について求めた」(埼玉県の大野元裕知事)、「自分の行動が愛する人の命を守るんだ、日本を守るんだという強い気持ちを持ってほしいと訴えている」(千葉県の森田健作知事)と、具体的な議論が聞かれるどころか、公表済み内容のオンパレードだったからだ。

 それでも唯一、記者たちが色めいたのが、神奈川県の黒岩祐治知事の発言だ。

「小池知事におうかがいしたい。休業要請に対して都が協力金を出すということが聞こえてくる。協力金はどのぐらいの規模で、どのような考えによるものなのか」

 国の責任で休業補償をすべきだとする黒岩氏は、さらにたたみかける。

「都とそれ以外とは全然、財政規模が違う。(財政赤字に備えた)財政調整基金は神奈川と東京では19.4倍の開きがある。残念ながら足並みがそろっていない」

 核心をつかれた小池氏。

「今、検討中でございますので、それだけお伝えしておこうと思います」

 各役所の役人らから失笑が漏れる塩対応だった。

 会議は30分で終了。共同要請メッセージは「3つの『密』を避けること」などで、「今さら」の内容ばかりだ。

 そんな首長だが、「場外」ではスタンドプレーに走る。小池氏はこの会議後、西村康稔経済再生相と会談し、休業要請と協力金の支給で合意。翌10日に発表する。黒岩氏はといえば、「考え方が劇的に変わった。東京と同じ対応をする」と10日に休業要請を表明。都より大幅に少ない協力金で決着した。

 ライバル関係にある自治体とはいえ、緊急時に連携してほしいというのは、住民の願いだろう。それとも彼らは、「密」な連携まで避けようとしているのか。(朝日新聞川崎支局・大平要)

週刊朝日  2020年5月1日号